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MUV-LUV/THE THIRD LEADER(旧題:遠田巧の挑戦)
3.SES計画U
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の比ではない。あれは戦争というより災害に近い。BETAに相対した時の新兵は、地震を感じた鼠のようなものなのだろうな。人間も理性で抑えつけていなければ一目散に逃げ出すだろうよ。」
「BETAとはそんなに恐ろしいものなのですか…?」
「そうだ。強いとか、手ごわいとかではない。恐ろしいものだ。故に新兵は八分を生き抜くことすら困難だ。個人差はあるが、新人衛士は誰もが多かれ少なかれ初陣で恐慌状態になる。操縦桿を握る手が震えるとか、漏らすなんてのは軽い方だ。頭の中が真っ白になって微動だにせずBETAに殺されるなんてことも日常茶飯事。最近ではそれを克服するためにバイタルデータに異常が見られた場合には薬物投与やら催眠暗示やらが使われるようになった。まあそれでも異常な興奮状態になったり、沈静状態になったりでまともにはならないんだが。一回の出撃でPTSDになって衛士適正を失うってこともある。」
「………。」
想像以上に厳しい現実。それを柳田は語った。
巧は心のどこかで自分がヒーローになるような幻想を持っていた。それも仕方がないことだろう。幼いころから必死に鍛え続け、同年代の子供よりも心身共に強くなったという自覚があったし、戦術機は人類の刃で、衛士はそれを操るヒーロー。それが巧の戦術機に対する認識であったし、日本人の多くがそう考えていた。
「だから『生き残るための教練』というのは難しいんだ。それでもやるかい?」
「はい。その話聞いて気持ちは固まりました。自分は死ぬ気などありませんし、絶対に死の八分を乗り越えて見せます。」
「そうか…では付いてきなさい。」
ここで引くことはできない。恐怖はある。しかし、幼いころから自分に掛けられてきた期待、そして何よりその期待に応えてきたという誇りが巧の決意を促した。

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柳田に付いていった先は道場だった。巧は訓練の中で様々な格闘技を齧っていたし、剣術もある程度こなしてきたが、ここまで本格的な道場は初めてだった。
「さて巧君。私はこれまで君を客として扱ってきたが、訓練をするにあたっては君は弟子、つまり身内として扱うことになる。私のことは先生、または師匠と呼びなさい。分ったかい?」
「はい。よろしくお願いします!」
「いい返事だ…。では巧、これを受け取れ。」
渡されたのはひと振りの日本刀だった。
「BETAとの戦いで、特に初陣で必要なのは技術ではなく胆力だ。それも絶望的な恐怖にさらされても、いやそんな状況だからこそ普段の実力以上の力を発揮できるような本能に刻まれた精神性こそ必要なのだ。だからこれからのお前の鍛錬では常に真剣を使った切り合いを行う。無論力は抑えるが、少しでも気を抜いたらお前は死ぬ。どうする?」
「っ…。」
覚悟
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