暁 〜小説投稿サイト〜
剣士さんとドラクエ[
48話 帰国
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 私は、誰もを守れるような強い人になりたかったんだ。だから強さを追い求め、他は蔑ろにしてきた。自分の身なんて、守りはすれど、二の次で。守れればよかったんだ。それしか出来ない私は。でも、それすら為せなかった。

 忘れてたわけじゃない。忘れていたかったわけでもない。でも、私は確かに目をそらしていたんだ。
 
 枯れ草が、私のブーツに絡みつく。そこだけ暗い空が私の心までもを暗くする。心が、麻痺していくように何も感じなくなっていく。いや、そうじゃない。それは間違いだ。私の心は、悲しみで閉ざされていったんだ。怒り?やるせなさ?そんな感情は、悲しみの前では消えたんだ。

「……」
「……、帰ってきたんだ」
「そうだね」

 目の前にそびえるのは、美しかったトロデーンの王城。「トウカ」の十八年の心の故郷だ。実際の生まれなんて分かりはしないんだから、故郷はここだけなのだから。

 黒雲の立ち込める不吉な空。鋭い棘のある茨の絡みつく城。かつての面影?ああ、全てはドルマゲスのせいで呪いの城と化したトロデーン城から懐古を感じろって?そんなのは無理だ。

 あの船の情報を知るために、多くの蔵書を誇るトロデーンへ帰ってきた私達は当然、呪いによって人々の活気が消えた城を見ることになる。

 フラッシュバックする忌まわしい呪いの瞬間、脳裏に浮かぶのは茨に変わった義両親。見る影もないモノトリア家、動かない兵士たち。涙すら枯れ果てた私はただ座り込んだけで、あの時はただ必死に親友を追っただけだった。無力感を噛み締め、ドルマゲスの「討伐」を誓った。

 ゼシカの炎の魔法が扉を巣食う茨を焼き払ってくれる。開かれた扉、その先にはあの日と変わらぬ様子で静まり返る城がそこにあった。絶対にあり得ないと分かっていながら、開かれた扉の向こうに人々の活気を求めていた私は、ただの馬鹿だ。

「……こっちだ」

 皆を案内しつつ、城の方を伺って気配を探る。あの日、全ての生物が茨の呪いによって時間を止められたのを確認した。猫すらもそうだったんだ。だから、城の中に動く気配があるのは明らかにおかしい。教会の昨日が停止し、聖なる守りが機能していない以上、ここに魔物が現れてもおかしくない。

 考えたくはなかったけど、やっぱり……ここにも魔物が出るのだろうか。旧修道院跡地のように、人の住んでいた所に……我が物顔で巣食う魔物がいるのだろうか。許せない。許さない、絶対に!

「あれ?」
「どうしたの?」
「開かないんだ」

 城の外から図書室に入ろうと試みても開かなかった。……トロデーンの扉をぶち抜くわけにもいかないし、城の中を通って大回りするしかないね……。ああ、なんてついてないんだ。早く、早くドルマゲスを追いかけなきゃいけないっていうのに!

・・・・


[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ