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僕らの一年日記
4月17日 皆木の過去
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階段を上がり、4階へ。そしてたどり着いた放送室。二重扉を開けていくと、そこには8人でUNOをする放送部員がいた
由紀はもちろんのこと、なぜか才茂くんもいる
「あ、入部?あ、このゲームやってるって言わないで!」
上靴の色を見るに、3年生だろう、先輩だった
「あ、大丈夫です、言わないですよ。最上さんに用があってきました」
すると、由紀はもう一抜けしていたようで、立ち上がって私の方へ来た
「そろそろ行かなきゃまずいもんね」
由紀は、だいぶ状況を理解しているようだった
「俺はまだ途中なのに。まぁ、行けばいいんだろ、行けば」
才茂くんも、カードを置いて、放送室から出た。由紀は丁寧に、失礼します、と言って放送室を出た
私も軽くお辞儀をして、二人のあとを付いていく
「もっと早く善田に言ってくれればよかったのに」
由紀は笑いながら言う。何も知らないから、そんな笑顔ができるんだろうな
「ううん、私、人と話すことも、笑顔も苦手なの」
「え、そうだったの?」
由紀は立ち止まって驚いた。才茂くんは「やっぱりか」とつぶやく。やはりお見通しだったようだ

髪の毛は今よりずっと長かった。メガネもかけていた。おしゃれだったわけでもないし、特にスカートは長かった
人と話すことがとても怖かった。そうやって周囲に怯えるから、余計に周りから突き放された
きっかけは中二のころ、上靴に牛乳がかけられていたことから始まる。そこから、毎日のように、上靴に落書きされたり、隠されたり、火をつけられたり・・・・
下駄箱に防犯カメラをつけることで、上靴への被害はなくなった。でも、今度はクラスでのいじめが始まった
誰も犯人を探そうとはしなかった。むしろ、やった勇気を賞賛するほどだった
それ以来、人が信じれなくなった。中学生の時は全く楽しめなかったんだ
だから、今度こそはうまくやろうと思って、一生懸命イメチェンして、明るい人間を装っていた
このとおり、すぐに見抜かれちゃったんだけどね

「別に、いいんじゃね。話せなくっても」
真っ先に口を開いたのは、思いもよらぬ才茂くんだった
「すぐに変わる必要もないだろ。そういうのは自然に変わるもんだろ。無理に変わろうとして無茶するもんでもねぇし。まずはこの総合理科研究部の小さな世界だけでも変えてきゃいいじゃん。俺はそういう状況、なったことあるから、ちょっとはわかる。別に、俺と友達でもいいよ」
だるそうに、でもまるで、当たり前のように、淡々と、才茂くんは話す
なんだか上から目線なのは気に入らない。でも、こんなにもいい言葉が聞けるとは思わなかった
才茂くんは、結構いい人なのかもしれない。仲良くなれば信用できる人なのかもしれない
「ありがとう、才茂くん」
心からの笑顔で、素直にお礼を言った。才茂くんは少しだけ笑った

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