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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第五十八話 来訪者(その2)
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う男もそうだ。あの男が何をしたか知っているか? ミッターマイヤーがオーディンに着く前に死ぬような事があれば謀殺したとみなすと大声で触れ回ったのだ。おまけに軍務省にまでそれを伝えたのだぞ。エーレンベルクからすぐに連絡が来た。ミッターマイヤー少将を殺せば元帥への昇進などありえぬとな。そして今度はヴァレンシュタイン、卿がきた。皆、わしに恨みでも有るのか? 答えてくれ、ヴァレンシュタイン」

頼むからそんな眼で俺を見るな。あんたに同情したくなるじゃないか。俺はあんたの敵なんだ。いや、今は敵ではないか……。しかしこの事件いったいどうなってるんだ。俺はこの事件はミッターマイヤーが被害者だと思っていた。いまではブラウンシュバイク公のほうが被害者に見える。

原作ではアンスバッハがフレーゲル男爵をブラウンシュバイク公の名前で止めているがあれは嘘じゃないってことか。となるとブラウンシュバイク公がエーレンベルク元帥にミッターマイヤーの処罰を求めているのは、あくまで身内に対するポーズという事にならないだろうか。コルプト子爵が弟の仇を討とうとして返り討ちにあっているが、それ以外には誰もミッターマイヤーを殺そうとしていない。コルプト子爵はガス抜きとして使われたのか? 幸いコルプト子爵家はリッテンハイム侯とも縁戚にある。ガス抜きの駒としては適当だろう……。

「公爵閣下、閣下のお気持ちは判りました。小官の勘違いだったようです。失礼しました。しかし閣下の周囲には閣下のお気持ちがわからない人間がいるのではありますまいか」
「わしの気持ちがわからんだと?」
「はい」

ブラウンシュバイク公は不安になったようだ。助けを求めるように周囲を見渡す。
「ヴァレンシュタイン中将の言うことは無いとは申せません。主だった方々の所在を確認しましょう」
「うむ、そうしてくれ、シュトライト」

シュトライト准将が答えると、ブラウンシュバイク公はせきたてるように答えた。シュトライトのほかアンスバッハ、フェルナーも動き出す。さすがに俺のいるところではまずいのだろう。部屋を出て行った。

部屋には俺とブラウンシュバイク公だけが取り残された。気まずい事この上ない。ブラウンシュバイク公は時折溜息をついたり、切なそうに俺を見たりする。そしてブランデーを飲む。しかしどう見ても旨そうじゃない。

「閣下、その辺でお止めになってはいかがですか」
「そうだな、卿は飲まぬのか」
「はい。どうも体が受け付けないようです」
「そうか、残念だな……、こういうときは良いぞ」
「……」

「卿の好意も無駄になってしまったな」
「?」
つぶやくような声だった。公は俺を見ていない。うなだれたまま喋っている。
「暴走するものがいるとすれば、おそらくはフレーゲルだろう。せっかく卿が機会をくれたとい
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