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美食
9部分:第九章

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第九章

「それは」
「その麦飯より美味しいですから」
「そんなに美味いのか」
「まずは食べてみせですよ」
 言いながらさらに美味そうに食べていく利樹だった。
「ですからどうぞ」
「よし、それなら」
 覚悟を決めて一口食べてみる。すると。
 利樹は彼がその雑穀入りの御飯を食べたのを見て。問うてきたのであった。
「どうですか?」
「美味いな」
 八神は素直にその感想を述べた。
「美味い、確かに」
「でしょう?この飯は美味しいんですよ」
 にこりと笑って言ってきた利樹だった。
「それもかなりね」
「そうだな。美味いよ」
「それでですけれど」
 今あるのは御飯だけではない。話はそちらにも移った。
「犬は」
「ああ、今日のメインか」
「そうですよ。それはどうですか?」
「ちょっと待ってくれよ」
「ええ」
 こう言いながらその保身湯を食べてみる。すると。
「いいな」
「美味しいですか」
「結構な」
 利樹に対して納得するような顔で述べた。
「いい感じだよ」
「そうですか。犬も美味いんですね」
「そうだな。犬はこんな味だったんだな」
「じゃあ俺も食べてみますね」
「ああ」
 こうして彼も食べることになった。その感想は。
「あっ、確かに」
「いけるよな」
「ええ、美味いですね」
 にこりと笑って述べる言葉だった。
「犬もゲテモノって言う人がいますけれど」
「そうじゃないんだな」
「そうですね。いけますよね」
「そうだろう」
 ここで二人のテーブルの側に来ていて緒方が言ってきた。にこりと笑っての言葉だった。
「犬もいいものなんだよ」
「ええ、マスター」
 利樹がにこりと笑って彼の言葉に応える。
「これはかなり」
「よく犬を食べるのはどうとか言うのは間違っているんだ」
「美味しいからですか?」
「美味しいというよりこれは一つの文化なんだよ」
 彼はこう言うのだった。
「犬を食べるのも文化なんだよ」
「文化ですか」
「鯨を食べるのと同じだよ」
 ここで日本人らしい表現で述べるのだった。
「鯨を食べるのとな」
「そういうことですか」
 八神は緒方の今の言葉で彼が何を言いたいのかわかった。
「鯨を食べるのに反対することと犬を食べることについて批判することは」
「同じなんだよ。だからそれはいけないんだ」
 はっきりと答える緒方だった。
「文化なんだからね」
「成程、そうですね」
「前に彼に言ったことだが」
 利樹を見てからまた述べる緒方だった。
「食べるのは美味追求であるだけでもなく健康第一で」
「医食同源ですね」
「そう、そしてそれだけじゃないんだ」
 そしてここで言うことが、であった。

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