暁 〜小説投稿サイト〜
藤崎京之介怪異譚
last case.「永遠の想い」
Z 同日 PM3:41
[5/5]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
?」
 それは重い問いだった。メスターラー氏は何も言わないが、俺の肩に置いた手に力が入っているのが分かる。
 だが、俺はその問いに直ぐに答えることが出来なかった。この状況で、それに対して明確に答えるられる者なんていないと思う。それも…俺がその中心なのだ…。
 たとえここで無理だと答えようとも、これから逃げることなんて出来はしない。生きているうちは、それに抗い続けなくてはならないのだ…。
 そんな俺を見かねて、メスターラー氏が宣仁叔父へと言った。
「彼は疲弊しています。それに友を亡くしたばかりなのだから、今は…」
「いや、今だからこそ聞かねばならない。京之介には…悪いと思ってはいる。しかし、これは終わりではないのだから…。」
 宣仁叔父の表情は苦しそうだった。
 だがその刹那、俺の心に田邊の笑顔が浮かんだ。それは最期の笑みではなく、傍らで音楽をしたり事件を調査していた時の笑顔…。そして思った。
今の俺は、あの時彼に想われた俺なのか?
 今のこんな俺を田邊が見たら、きっと怒るに違いない。先生、何やってるんですか!…何て聞こえてきそうだ。
 だが彼は今、下で冷たくなっている。その彼が俺を…多くの人々を守って逝った。少なくとも、そんな彼に答える義務が俺にはある。
「どこまでも…戦い続けます。今言えるのは、それだけです。」
 俺が顔を上げてそう言うと宣仁叔父は静かに頷き、俺とメスターラー氏を立たせ、そして共に何も言わずに下へと降りたのだった。

 夕の陽射しも和らぎ、風が冷たくなってきた…。空は藍と紅が拮抗し、そこへ幾つかの星が姿を見せている。
 下へと降りる直前に見上げたその空は、まるで田邊の死を哀れんでいるようで…涙が一筋零れた…。




[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ