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藤崎京之介怪異譚
last case.「永遠の想い」
W 5.2.PM1:36
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で電話しますので…。」
「分かったよ。それじゃ、奏夜。綾を頼んだぞ。」
「任せとけって!んじゃ、行くぞ!」
 そうして二人は部屋を出た。綾は捕まった犯人よろしく、項垂れながら奏夜の後に付き従って行ったのだが。
 二人が立ち去って暫く、俺とアウグスト伯父はお茶を楽しんでいたが、その時、俺はアウグスト伯父へとある考えを口にした。
「伯父様。僕、ここを離れてみようかと思うんです。」
「何故じゃ?前にも言ったが、迷惑だなどと思っておるのじゃったら…」
「いや、そうではないんです。ただ…僕がここに居ることで、無関係な人達を巻き込むと考えたんです…。」
 俺はそう言ってからお茶を啜った。伯父はそんな俺を見て、一つ溜め息を洩らしてから口を開いた。
「京之介。お前の想いは解るが、どこへ行っても同じじゃ。奴等は何処へでも行き、何処ででも禍を振り撒く。それは誰にも止められんよ。」
 アウグスト伯父はそう言うが、やはり…ここでの事件は俺も一つの要因だったと思う。それを考えると居た堪らない。だから、俺はとある山中にある修道院跡にでも隠ろうかと考えたんだ…。
 そんな俺の考えを知ってか、アウグスト伯父は強い口調で俺に言った。
「エマヌエル。今のお前に心を弱くしている余裕などない。そんなことを考えとる暇があったら、演奏のことを考えんかい!町の楽団からも指揮の依頼が入っとるし、聖マタイ教会からもオルガンの定期演奏を続けてほしいと言われとるんじゃ。馬鹿な考え休むに似たり…日本ではそう言う言葉があるのじゃろ?今のお前にピッタリじゃわい。」
 アウグスト伯父が珍しくセカンド・ネームで俺を呼んだ。アウグスト伯父がセカンド・ネームで呼ぶときは、決まって本気で怒ったり心配してくれたりしている証拠だ。
「伯父様…ちょっと酷いんじゃないですか?」
「何を言っとるか、若僧が。」
 そう言いながらも、アウグスト伯父は笑っていた。伯父には敵わないな…全く。
「それじゃ、僕はこれから町の楽団に顔を出してきます。」
「その意気じゃ。」
 アウグスト伯父はそう言い、そして微笑みながらお茶を飲み干したのだった。




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