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歌集「春雪花」
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 徒然に

  夜更けに想ふは

   恋し君よ

 わが身厭わば

    霧と消へなむ



 手持ち無沙汰な夜更け…そんなときはどうしても彼を想ってしまい…。

 想いを告げることなぞ出来ようもなく…かといって忘れることも出来ず…。

 人は…こんな私を蔑み、躊躇うことなく非難するだろう…。
 親子程も歳の離れた…それも男を想う私を…。

 もし…彼にこの想いが知れて嫌われたらと考えただけで…私は身震いするのだ…。

 こんな私は…この濃い夜の霧に溶けて…消えてしまえば良いものを…。



 暖かき

  春に匂いし

   沈丁花

 想いかわらぬ

   静けき日溜まり



 春らしい麗らかな日和…どこからか爽やかな沈丁花の香りが広がる…。

 去年も…彼がこの町から去った後に香った沈丁花…。今年も…もうそんな時季になったのだな…。

 その香りは…否応なしに去年の思い出を蘇らせ…私の心を揺さぶるのだ…。

 変わらぬ願い…変わらぬ望み…。

 彼といたい…彼と在りたい…彼と共に生きたい…。

 そんな虚しく儚い思いは…あの時と変わらぬ静かな日溜まりの中へと…解けてゆく…。




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