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真・恋姫†無双~現代若人の歩み、佇み~
第一章:大地を見渡すこと その弐
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までの道程が遠くに思える。このまま愛馬が走り続けてくれるだろうか。それとも私が力尽きてしまうのだろうか。後ろの奴等に追いつかれたらどうなるのだろう。想像だにしない屈辱と、この世を拒絶したくなるほどの絶望が襲ってくるのだろうか。

(・・・・・・・・・駄目だ!弱気になっては駄目!)

 自らの頭を過ぎる不吉な妄想を振り払って只管|(ひたすら)に前を見つめるが、それでも目には不安が色濃く出て揺らめいている。
 まだまだ町までは遠い。20里|《約10000メートル、つまり1里=500メートル》はあるのではなかろうか。鈍ってきた頭でそう考える。気を引き締めなければ。そんな思いを強め、手に持つ手綱をより強く握り締めた。後ろに続く暴君共を振り払うために。
 そんな折に、一つの人影が、町の方向からゆっくりと現れてきた。




(どうみたって女狙いの賊だな、ありゃ。)

 平野が只管に広がっている。走駆の邪魔をするような障害物、岩・坂・出っ張った丘陵などがほとんどない。まだ距離は少しばかり遠いが、それでも己と馬の速さを考えれば近いともいえよう。
 辰野仁ノ助は馬もかくやといわんばかりの俊足で、遠くから見えてきた鈍い銀色の光を刃のそれと見定めた。風はやや追い風、それ故に賊に追われている彼女のもとへ駆けつけることが早くなることが、彼にとって幸運となった。刀柄には既に左手がかけられており、走るたびにゆれないようにひしと押さえられている。風と己の出す速さに揺れる紐はばたばたと音を立ててたなびいている。
 見つめる先には既に追われている者の姿形がはっきりとし、それに何かを思う前にその後ろから迫る四本の銀色の正体を確認した。太陽の光を西から受けて鈍色に光るそれは紛れも無い、刀であった。それを裏付けることに四頭の馬を駆る男達の身なりがある。遠目から分かるほどの年代物の使い古した服装。女性のそれと比較して、すぐさまに賊と判断できてしまうほどの荒々しい馬遣い。彼らにとってみても、町のすぐ近くまで追う必要はなかったのであろう。しかし自らが生きること考え欲求を満たすことを考えるあまり、頭の回転が鈍くなっているのか。頭の回転が早いと話し合いによる解決が期待されてくるのだが、こうとなっては話し合いにも応じるような状況ではない。彼はそう断定して、四人のその頭に巻かれた黄色の布の事を聞き出すついでに、全員を叩き斬ることを決めた。

 視界に映る女性の姿がはっきりとわかるほどに接近した。女性との距離は既に三町|《約330メートル,よって1町≒110メートル》を過ぎようとしている。助けが来たのであろうか、心なしか女性は手綱を打つペースが安定してきている。これならば町に逃げて、救援を求めるまで体力は温存できるだろう。距離はさらに縮まっていく。二町、一町半、一町、半町。女性の
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