第二章
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「怒るさ」
「やれやれね」
「全く、何を言うんだよ」
「だから見たいって思ったからよ」
「雪がないのがマイアミなんだよ」
またこうしたことをだ、ペドロは言った。
「わかったら店手伝え、従業員なんだからな」
「そうね、そろそろ開店だしね」
「今日も忙しいぞ」
その開店前のまだシャッターを締めている店の中でだ、ペドロはファナに言った。もう店の中にはアイスがしっかりと用意されている。
「暑くなりそうだしな」
「今日もマイアミは夏ね」
「ここが夏でない時なんてあるから」
「だから雪も降らないのね」
「ああ、海には観光客が大勢だ」
水着姿の彼等がというのだ。
「そしてここにも来てくれてな」
「私達はアイスを売って」
「稼ぐぞ、食う分だけでなくて」
彼等がである。
「さらに儲けてな」
「二号店ね」
「それも出したいからな、いいな」
「ええ、働くことについてはね」
ファナもにこりと笑ってだ、ペドロに応えた。
「私も異論はないわ」
「じゃあ気合入れて働くぞ」
「勤労感謝ってことね」
こうしたことも話してだ、二人はシャッターを上げてだった。そのうえで。
仕事をはじめた、そしてだった。
二人はこの日も真面目に働いた、客の入りはよくその分稼ぎもよかった。二人はこのことには満足していた。
だがファナはそれでもだった、その思いが自然と膨らんでいってだ。
暫く経ってからだ、またペドロに言った。今度は午後の今はたまたま客が店の中にいない。ファナはその時に言ったのだ。
「やっぱり雪見たいわね」
「だからシアトル行け」
ペドロの返事は今回はクールなものだった。売り切れたアイスの補充をしながらの返事だ。
「それで好きなだけ見ろ、スキーも楽しめ」
「また随分な言葉ね」
「前も言っただろ、マイアミだぞここは」
だからだというのだ。
「雪なんてあるか」
「前と同じこと言うのね」
「それ以外に言えないからな」
「やれやれね」
「やれやれも何もな」
「マイアミはっていうのね」
「そうだよ、ここはアメリカで一番雪と無縁の街だぞ」
理由は既にペドロが言っている、常夏の街だからだ。
「だから諦めろ」
「そこを諦めないで何かしたらね」
「見られるっていうのかよ」
「違うかしら」
「そんな筈あるか、神様でないとな」
それこそというのだ。
「マイアミに雪なんて作れないさ」
「降らすこともなのね」
「スコールは降ってもな」
これはいつも降る、何しろ暑いからだ。暑い場所ではスコールはそれこそ付きものであると言っていい。
「雪は降らないさ」
「寂しい話ね、そもそもね」
「そもそも、どうしたんだ?」
「雪もスコールもお水じゃない」
こんなことをだ、ファナは言いだした。
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