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Blue Rose
第五話 姉の苦悩その二

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「その日によって飲むお酒が変わる癖はそのままなのね」
「本当に飲み過ぎだよ」
 また言った優花だった。
「そんなに飲んでばかりだと本当にだよ」
「身体壊すわよね」
「飲み過ぎは毒だよ」
「わかってるわよ、お酒や百薬の長だけれど」 
 自分でも言った優子だった。
「過ぎれば毒になるわ」
「百毒の長だよね」
「それにもなるわ」
「わかってるのならね」
「わかっていて飲んでいるのよ」 
 これが優子の今の返事だった。
「今はね」
「忘れたいから?」
「そうよ、それでなのよ」
「全く、無茶だよ」
「無茶も承知も」 
「無頼な飲み方だね」
「太宰治でも坂口安吾でもないわよ」
 二人共無頼派と呼ばれる小説家達だ、終戦直後の荒廃した世相の中で有名になったこれまでの価値観を否定しかつ破滅的な人生を送った。
「別にね」
「それでもだよ」
「太宰みたいに飲むのはっていうのね」
「よくないよ、あの人も身体悪かったんだよね」
「ええ、自殺する直前はね」
 それこそというのだ。
「もう死期が近かったとも言われてるわ」
「そうした生活送ってたからだよね」
「結核だったけれどそうした生活も影響していたでしょうね」
「だったらだよ」
「お酒をここまで飲むのは、よね」
「止めないと」
「そうよね、けれどね」
 優子の返事は決まっていた、今はこれしかなかった。
「飲まないとなのよ」
「いられないんだ」
「そうよ」
 やはり飲みつつ言う。
「こうしてね」
「だから今日もなんだ」
「二本よ」
 一本は既に空けている、そしてその二本目を飲みつつ言うのだった。
「それで止めるわ」
「それでも充分飲み過ぎだけれどね」
「そのうちわかるわ、飲まないとね」
「やっていけない時があるんだね」
「そうよ、それが今の私なのよ」
「それが何時終わるの?」
「わからないわ」
 飲むのは続けていた、そのうえでの言葉だ。
「正直に言うとね」
「そうなんだ」
「全く」
 優花をだ、この夜はじめて顔を向けて見て言った。
「何でなのよ」
「今度はどうしたの?」
「ねえ優花」 
 弟の名前を呼んでの言葉だった。
「優花は優花よね」
「?どうしたの?」
「聞いてるの、そうだよね」
「そうじゃないの?」 
 優花はきょとんとして姉に返した。
「姉さんもいつも言ってるけれど」
「そうよね、優花がどうなってもね」
「僕は僕だよね」
「そうよね」
 またここで顔を正面に戻した。
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