暁 〜小説投稿サイト〜
暴れん坊な姫様と傭兵(肉盾)
11
[1/8]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話





 ―――戦場(せんじょう)は敵と味方で()り混じっていた。

 傭兵(ようへい)達の役目はシンプルだ。
 敵と見たら攻撃しろ、以上である。

 ただ味方となる正規兵(せいきへい)の装備を覚え、傭兵(ようへい)であると思われる装備もある程度把握(はあく)する。
 それ以外の兵士は敵である。

 国境(こっきょう)境目(さかいめ)ではなく、少しデトワーズ国内の内側に位置する傭兵の砦は、敵と見れば攻撃すればいいだけの暴力的なお仕事だ。
 だが逆に言えば、そこに統率(とうそつ)というものはない。

 全周囲(ぜんしゅうい)に味方がいるし、敵もいる。
 誰が誰なのか判別する(ひま)のない目まぐるしい戦場(せんじょう)
 傭兵(ようへい)ならよくある状況だ。

 こうなってしまえば(たが)いに消耗(しょうもう)し続ける乱戦だ。
 敵が、味方が、敵兵が、傭兵(ようへい)が、戦場(せんじょう)の中で()り混じって殺しを()り広げる。

 どちらかが全滅するか撤退(てったい)するか、そんな泥沼(どろぬま)な戦い続く……かのように思われた。



「オラオラオラァ! どけどけぇ!!」


 ある一人の傭兵(ようへい)がいた。 ある一人の敵兵がいた。

『ぐべっ!?』『ぶはぁっ!?』


 その二人は―――拳によって平等/無差別(いっしょ)に“()かれた”。


 一瞬の出来事。

 この乱戦の中では何が起きたのか理解する(ひま)もなかった。
 敵味方()り混じる戦場(せんじょう)戦車(チャリオッツ)が突っ込んできたのか、と彼らは思っただろう。
 しかし彼らを()いたのは、馬ですらなかった。

「ひ、姫様ぁ!? 今、人が…人が飛ばされましたよぉ!?」
「殴り飛ばしてるんだから当たり前だろ!!」

 そう、それはエルザ・ミヒャエラ・フォン・デトワーズ姫陛下。
 彼女が振り回す“拳”が彼らを“()いた”のだ。

 信じられない光景だが…彼女の拳が当たれば、人は飛ぶ。
 それこそ砂利(いしころ)のように、接触(せっしょく)しただけで人が飛びまくる。

「ひえー! また人がー!?」

 ムチャクチャだ、色々とブッ飛んだ光景だ。

 自分は引き摺られるようにして、エルザ・ミヒャエラ・フォン・デトワーズ姫陛下に引っ張られていた。
 エルザ姫は、僕と言う大の男の重量(おもさ)(なん)なく“引き回し”、戦場(せんじょう)の中を暴れ牛の如く“()き回し”ている。

 だがむしろ、エルザ姫の所業(しょぎょう)は暴れ牛の方が可愛く見えるくらいだ。


[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ