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おぞましい鏡
5部分:第五章
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第五章

 そしてだ。ここでも教頭先生は自分のことを話した。
「まあ私は今も松田聖子ちゃん一筋ですが」
「鏡、鏡・・・・・・」
 今度はこんなうわごとを言う先生だった。
「鏡が・・・・・・」
「鏡?」
「職員室の前の鏡」
 先生はさらに言う。
「悪魔の鏡・・・・・・」
 ここまで言ってだ。先生はがくりと落ちた。そうしてだ。
 すぐに保健室に放り込まれてだ。そこから暫く入院させられた。何か恐ろしい体験をしてショック症状になったのだと診察された。
 そしてだ。退院して仕事に復帰した先生はだ。こう話すのだった。
「職員室の鏡ですけれど」
「あの鏡ですか」
「何かあるんですか?」
「真夜中に近寄らない方がいいみたいですね」
 こうだ。同僚の先生達に話すのだった。
「そうみたいですよ」
「あれっ、何かあったんですか?」
「ひょっとして」
「何もなかったです」
 暗い顔になってだ。先生達に話すのだった。
 今も飲んでいるがそれでもだ。先生の酒は進んでいない。
 ビールをあまり飲まずにだ。先生は話していく。
「ただ。それでも」
「それでも?」
「といいますと」
「いや、怪談は信じるものですね」
 何を見たのか話さないまま話す先生だった。
「それはわかりました」
「何かよくわからないですがそうなんですね」
「怪談は信じてですか」
「あの鏡には真夜中には近寄らない」
「そうするべきなんですね」
「はい、そうです」
 こう言ってだ。やっとビールを飲む先生だった。しかしそのビールは普段のビールよりもだ。幾分か飲みにくいものに感じられた。
 そして学園の生徒達がだ。肝試しにだ。
 その真夜中に鏡の前に行った話を聞いた。そしてだ。
「それで見たらしいんですよ」
「何をですか?」
「何かね。SMスカトロ系のハードゲイ軍団を」
 教頭先生はこう先生に話す。職員室でだ。
「それに囲まれて迫られるのをです」
「見てしまったんですか」
「いえ、噂ですけれどね」
 こうした話の常である。
「それに迫られて襲われかけて」
「で、逃げられたんですか?」
「もう少しで後ろからも前からも攻められるところだったかと」
「危うかったんですね」
「しかも彼等のプレイで」
 つまりだ。ホモのSMスカトロである。
「そうなるところだったそうです」
「そうですか。危うかったですね」
「まことにですね」
「本当に怪しい噂ですね」
「ええ、そう思います」
 先生はそれは噂ではないと確信した。だが今はそのことには何も突っ込みも入れずにだ。そうしてだった。
 話を聞いただけだった。だがこの噂は広まりだ。もう誰も真夜中にその鏡の前に行こうとはしなかった。あまりにもおぞましい噂なので。


おぞましい
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