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俺の四畳半が最近安らげない件
ブルボン 再び 〜小さいおじさんシリーズ2
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水盆に見立てた黒い灰皿に、何処からか調達してきた雑草の花を浮かべ、傍らに座る三人は物思いにふけっている。
その光景は、あたかも古代中国の水墨画の如き趣である。

ここが俺の4畳半だという現実に、目をつぶれば。

「……さて、今日の茶菓子はルマンド、と決まったわけだが」
色白の、背の低い男が不機嫌丸出しで呟く。
今日も真紅の豪勢な錦を纏っている。差し向かいに座る白頭巾の男は、傍らに身の丈の半分近くはありそうなルマンドを横たえて微笑んでいる。
 ここ最近現れるこの『小さいおじさん』達は、余程ここの居心地がいいのか、見かける頻度が増えつつある。俺の灰皿も、読んでいない本も借り暮らしされっぱなしだ。どうせ借り暮らしされるなら美少女がいいのに。

「当番制は、賢明な案でしたね。毎回無駄な争いをせずに済みます」
「卿が毎回のようにルマンド指名するという落とし穴には閉口だがな…」
端正だが神経質そうな男が、美しい眉の間を押さえて俯く。
「あぁ…散らかる。ルマンド、ほんと散らかる」
「凝りだすと止まらない性分なのです」
水盆に浮かせた蓮華に紙つぶてをぶっつけて遊んでいた豪勢が、顔を上げた。
「今まで、菓子を3等分するのは夏侯惇に任せていたが」
あご髭をひねりながら、豪勢はぼんやりと目を泳がせた。
「……最近、色々自信をなくしてしまってな」
「おや、それは聞き捨てならない。あの自信の塊のような夏侯将軍が」
「貴様が毎回、崩れる菓子を切らせるからだ!!」
なんと、と呟き、白頭巾が羽扇を口元に寄せる。…端正も豪勢に追従するかのように、ルマンドの散らかりっぷりを非難しはじめた。しかし俺が見た限り、夏侯惇が自信をなくしたのは、彼がルマンドに剣を振り下ろしてカケラが散るたびに『うわ…!』とか『あー…散らかる、散らかる!』とかぶつぶつ零していた、どっかの誰かが直接の原因じゃないかと思われる。
「大体、菓子を切るとか武将の仕事じゃなかろう。今後は貴様んとこの人材で何とかしろ」
「うちの人材…ですか」
ふむ…と顎に手をあて、視線を泳がせる。
「居るであろう、貴様のところには。最高の豪傑が!…ほれ、ほれ!!」
豪勢の目が期待に輝く。端正は舌打ちをして横を向いた。
「は…では関羽殿、これへ」
白頭巾がパンと手を打ち鳴らすと、押入れの引き戸がからりと開き、32センチくらいの、髭を蓄えた偉丈夫が現れた。…まだいたのか、こういうのが。彼は大股で白頭巾の至近へ歩み寄った。…近い。喧嘩を売っているレベルで近い。彼は白頭巾を真上から見下ろす位置で、声を掛けた。
「これはこれは、丞相殿。これは、これは。しがない太守に、何ぞ御用向きで?」
……あれ、こいつら味方同士じゃないのか?何故、関羽から『鬼気』というか『遺恨』とかそういうものを感じるのだろう
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