暁 〜小説投稿サイト〜
鎮守府の床屋
後編
8.約束の行方
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屋の俺に切られたがってるとしか思えない……でもついに切ることは叶わなかったアホ毛を持った女で……

「は、ハル……」
「お前……球磨だよな? 球磨でいいんだよな?」
「く、球磨だクマ……」

 霧吹きで必要以上に周囲に湿度を補充し、俺のボケと妄想に過剰なツッコミを返し……

「球磨……球磨……!」
「ハル。約束は守ったクマよ?」

 営利誘拐まがいのことをしでかし、俺の腹にコークスクリューパンチを突き刺した回数は数知れない……

「球磨!!」
「ハル!!!」

 俺の隣にいつもいて、危ない時は俺を守ってくれた、俺が惚れた女性の……

「ハル! ただいまだクマ!!」
「おかえり!! おかえり妖怪アホ毛女!!」

 妖怪アホ毛女こと、球磨だった。

「なんで北上と一緒に部屋に入ってこなかったんだよ……!」
「は、恥ずかしかったクマ……」
「?」
「あ、あんなことしたあとで……家の前まで来て急に恥ずかしくなったクマ……」
「あんなこと?」
「えーと……最後の散髪……クマ」

 球磨はそういい、顔を真っ赤にして俯いた。……やめろ妖怪アホ毛女。そんな反応されたら思い出してこっちまで恥ずかしくなる……。

「だ、だから先に北上に入ってもらったクマっ」
「アホ……」
「でも会いたかったクマ……早く隣に帰りたかったクマぁ……」
「俺もだ……好きだ……大好きだ球磨!!」
「球磨も……ハルが大好きだクマぁあ!!」

 もうあれだ。北上の紛らわしい話し方も、この妖怪アホ毛女のアホみたいな言い訳も、何もかもどうでもよかった。球磨がここにいる。球磨が俺の目の前にいる。それでよかった。

「球磨姉はね。約束を守ったよ。だから次は、ハル兄さんが約束を守ってあげて」


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