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おぢばにおかえり
第二十四話 出会いその六
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「二階にね」
「そうだったんですか」
「それでG組よね」
「はい」
 今度は素直に答えてくれました。
「そうですよ」
「何か一年の頃思い出したわ」
 G組と聞いてついつい思い出したのでした。
「私もG組だったし」
「じゃあクラスでも先輩なんですか」
「まあそういえばそうね」
 言われてはじめてこのことに気付きました。けれどあまり気分はよくないです。
「だから教室は」
「いやあ、入学早々デートなんてね」
「だから違うでしょっ」
 かなりりっぷくを覚えだしました。
「案内するだけなのにどうしてそうなるのよ」
「僕はそう思ってるけれど」
「大体ね、私はまだ」
 あんまりいい加減な調子なんで本気で頭にきだして言いました。
「デートも男の人とお付き合いしたこともね」
「じゃあキスとかは?」
「あるわけないでしょっ」
 これもないです。ある筈がありません。
「そんなこと。お付き合いした人だっていないのに。
「そうなんだ」
「結婚してからよ、そんなことは」
 この考えはずっと変わりません。やっぱり何事も結婚してからです。キスなんてとても。そりゃデート位は、って思ったりもしますけれど。
「全く、君みたいな軽薄な子はどうかわからないけれど」
「僕だってまだだよ」
 阿波野君はこう返してきました。
「そんなのないよ」
「あら、そうなの」
「キスだってしたこともないし。デートなんか」
「ないの?嘘でしょ」
「嘘なんかつかないよ」
 私を見下ろして言ってきます。
「本当だよ。本当に女の子とデートなんてこれがはじめてですよ」
「へえ、意外とそういう経験ないのね」
 何か今変な言葉を聞いたような気が。
「はじめてのデートはね」
「ええ」
「やっぱり可愛い娘とね。したいなあって思ってたし」
「ふうん、だといいけれどね」
 話が微妙に噛み合っていないような気もしますけれど。それでも話のやり取りが続きます。どうも彼のペースで進んでいっていますけれど。
「阿波野君も高校でそんな娘見つけたら?」
「そうしたいですね」
「やっぱり恋愛っていいものらしいから」
 お付き合いしたことがないからどうこう言えません。中にはとんでもない目に遭って人間性まで変わっちゃったって人もいると思いますけれど。
「したらいいわよ」
「まあ僕自宅生ですしね。出会いは多いし」
「自宅生なの」
「家は奈良なんです」 
 天理高校での自宅生と寮生の割合は大体半々です。私も自宅生の女の子が一杯友達にいます。高校から入る子と天理中学から通っている子がいます。
「奈良の山奥でね」
「奈良って山多いわよね」
 これは少しわかります。おぢばの周りも山ですから。
「じゃあ阿波野君のお家の周りも?」
「鹿とか猿とか出ます」

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