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アインクラッド篇
断章 南十字の追憶
再会と出会い
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sight三人称
それから、アインクラッド中に二人の人物の噂が駆け巡った。一人は《死神》、恐ろしい実力を持つ孤高のPK。ラフィンコフィンや、その他の犯罪者ギルドには加わらず、必ず深夜、一人で殺人に及ぶという噂だ。虐殺ではなく対等の殺し合いを求めているようで、低レベルプレイヤーの中には《死神》と遭遇しても、「貴方じゃ足りない。」と見逃された人間も多いらしい。

もう一人は《南十字星》。二十五層に於いて、壊滅寸前のボス攻略レイドをほぼ独力で立て直したと言われる。そしてボスであった双頭巨人のHPを、丸々一本分たった一人で持っていった。攻略組の新たなリーダーにと期待されたが、二十五層ボス戦の後、一人、何処かへ消えてしまった。




アインクラッド第三十一層、現在の最前線。二十五層攻略から、早三ヶ月が経っていた。その迷宮区、一人の少年が佇んでいた。黒革で背中に赤い十字があしらわれたジャケットを羽織り、腰には片手剣が吊られている。その人物は、何をするでもなく、ただじっと前を見据えていた。

静寂に包まれる迷宮区に、何物かの足音が響く。その音に少年は僅かに眉を上げ、その足音を待ち受けた。現れたのは、黒いローブに身を包み、禍々しい漆黒の大槍を持った少女だ。その姿を認めた時、少年は静かに腰の剣を抜き放った。

「久しぶりだな?アマナ。………いや、《死神》と呼ぶべきか?」

「フフ♪お久しぶりですわ、お兄様。そちらこそ《南十字星》と御呼びするべきでしょうか?」

「いいよ、別に。勝手に付けられた渾名だし、これから殺す相手に渾名で呼ばれてもな。」

二人は無言で得物を構え、全くの同時に一歩踏み出した。















sightアマギ

「ガッ………!!?」

「クッ……………!」

殺し合いを始めて三十分。互いのHPは1割をきっていた。

「……フ…………フフフ♪お兄様………本気で殺ってないでしょう?」

「………何でそう思う?」

「お兄様が本気なら、今頃私の首は飛んでますわ。」

「そうか………俺も、お前が本気ならもう、心臓を串刺しにされてると思うが?」

「…………。」

やはり本気ではなかった。だが、それは喜ぶべきことではない。

「フフフ♪お兄様は本当に優しいんですのね。わざわざ私に合わせてくれるなんて。」

「グダグダ言わずに全力で来いよ。もう殺すぞ。」

再び地面を蹴る。先程までと段違いの早さだ。近付いてくるアマナの狂喜の笑みを見詰めながら、俺は無感情に剣を振り上げた。















暗い暗い迷宮区に、二人分の荒い息が響く。俺もアマナも、床に転がりゼイゼイ喘いでいた。辺りにはへし折れた片
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