暁 〜小説投稿サイト〜
おたまじゃくし
4部分:第四章
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

第四章

「お菓子ってのは確かに味が第一さ」
「はい、食べものなら何でも」
「それでもな。インパクトがあるとな」
「余計にいいですね」
「それがわかったよ。ましてやここはアメリカなんだよ」
 言わずと知れた資本主義の国だ。それならばだ。
「アメリカならな。目立たないとな」
「売り上げが伸びませんね」
「確かに今まではそこそこやっていけたさ」
 少なくとも店を続けられるかどうかと悩む程困ってはいなかった。これまでもだ。
 だがそれでもだとだ。クラークは言うのだった。
「けれど俺もアメリカ人だ」
「それならですね」
「夢はでっかく持たないとな」
「そして大成功ですね」
「アメリカンドリームだよ」
 よく言われることをだ。彼は目を輝かせて言った。
「このボルチモアの一店からな」
「まさにですね」
「ああ、俺はやるぜ」
 腕を拳にしての言葉だった。
「大金持ちだ。アメリカで一番の菓子屋になってやるぜ」
「そうですね。けれどです」
「ああ、どういった菓子を作るかだよな」
「虫をそのまましても只のコピーですよ」
 だからだ。それはだというのだ。
「オリジナリティがないですよ」
「俺もそんなことはしないさ」
 彼にしてもだ。日本人の真似はそのまましないというのだ。
「アメリカ人としてな。それはな」
「まあ合衆国も結構そのままコピーしますけれどね」
「どっかのアニメの真似とかな」
「その日本の」
「まあその話はなしだ」
 クラークは話題が逸れるのでこの話は途中で止めた。
 そしてそのうえでだ。こう言ったのである。
「まあとにかく。虫はしないさ」
「他のものですね」
「ああ、美味くてしかもな」
「インパクトですね」
「全米が目を剥くのを作るさ」
 目を輝かせてだ。言うクラークだった。こうしてだ。
 彼は実際にそうした菓子を作りだ。そのうえで店に出した。その菓子を見て客達は彼の予想通りその目を剥いてだ。それからこう言ったのである。
「何だよ、このお菓子は」
「こりゃないだろ」
「おい兄ちゃん、一体何考えてるんだよ」
「アル中かヤクか?そんなの止めておけよ」
「すぐに止めろよ」
「俺は酒は好きだけれどヤクは絶対にしねえよ」
 だからそれはないと返すクラークだった。客達に対して。
「とにかくな。俺はな」
「ああ、何だ?」
「それで何でこの菓子にしたんだよ」
「何で作ったんだよ」
「まあ食えよ」
 ここから先は言わない彼だった。あえてだ。
「食ってから言えよ」
「この蛙をかい?」
「蛇をかい」
「それに蜥蜴を」
 見ればどの菓子もだ。動物は動物でもだ。
 蛙に蛇に蜥蜴とおよそあまり好かれないものばかりだった。特にだ。
 客達は黒いものを見ていた。それは。

[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ