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鎮守府の床屋
後編
2.合同作戦
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『当鎮守府が疲弊しきっているのはご存知でしょう?! 物資の補給も満足に受けられず戦力の補充もない……運営に必要不可欠な妖精たちすらいない……当方をこのような苛烈な状況に追い込んだのはあなたがたなのですよ?!』

 朝っぱらから提督さんに呼ばれ執務室の前まで来た時、室内からこんな怒号ともいえる提督さんの叫び声が聞こえてきた。これからノックしようとしていた矢先のこの怒号に、なんだか俺はノックする気が失せたが……そうも言ってられん……

「とんとん。提督さーん。ハルです」
『あ、いいよー入ってー』

 提督さんの代わりに隼鷹の返事が聞こえた。あんな怒号の後に入るのも気が引けるが、仕方あるまい。意を決してドアを開いた途端、また提督さんの怒号が俺に襲いかかった。

「だから先ほどから何度も申し上げております! 資源と戦力の補充が無理なら、せめて今回の作戦から当鎮守府は外していただきたい! 近海の哨戒すらやっとの状況で、そのような作戦への参加なぞ不可能です!!」

 電話の受話器を持った提督さんは、受話器に対してものすごい剣幕でそう怒鳴っていた。隼鷹の方を見ると、彼女も心配そうに提督さんを見守っていたが、俺の視線に気がつくと、苦笑いを浮かべながら俺の方を向いた。

「どうした?」
「上とケンカしてる。どうも上から無理な注文されてるみたいでね……タハハ……」
「それは当方の艦娘に沈めという命令ですかッ?!」

 さっきから提督さんが言っているセリフがいちいち物騒だ。それに、ここまで怒りを顕にした提督さんも初めて見る。軍人は上の命令には絶対服従とは聞くけど、その軍人の提督さんがここまで抵抗するほどの無茶な注文をされてるのだろうか……

「俺、なんなら改めようか?」
「あー大丈夫大丈夫。電話もうすぐ終わるから多分」

 と隼鷹は苦笑するが、彼女も提督さんの様子が気になって仕方がないようで、提督さんの様子をチラチラと伺っている。

「ですから! ……中将?! 中将!! ……クソッ!!」

 提督さんと受話器の向こう側との熱いバトルは終了したようだ。提督さんは受話器を乱暴に電話に戻し、イライラを周囲に振りまきつつ、頭をボリボリとかいて自身の席に座った。

「ぁあ、すまん。見苦しいところを見せた」
「いやぁ。べつにそんなことないでしょう」
「いや、呼んだのは俺なのにな。……隼鷹」
「ほい?」
「すまんがコーヒーを淹れてくれ」
「はいよー」

 隼鷹は立ち上がり、執務室備え付けのコーヒーサイホンで器用にコーヒーを淹れ始めた。執務室内に心地良いコーヒーの香りがたちこめ、提督さんも次第に落ち着きを取り戻してきたようだ。

 3人分のコーヒーを淹れ終わり、隼鷹は俺達のもとにコーヒーカップを置いてくれた。香りだけで、こ
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