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鎮守府の床屋
前編
10.祭だ祭だっ!!(前)
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ゅー……酒を飲んで俺に腹パンを突き刺してきやがる……ッ!!」
「ひゃっひゃっひゃっ! 提督見てみなよ〜。ハルと球磨は仲がいいねぇ」

 片方が片方にぶん殴られてるこの状況を見て、仲がいいように見えるその目はどれだけ節穴なんだ隼鷹!!

「だなぁ。いやぁーハルが来てくれてよかった! ホント、来てくれたのがハルでよかった!!」

 提督さん、あなたも酔っ払ってるでしょ。仲いいヤツをぶん殴ってくる女なんかどこにいるんですかッ!

「いやぁ、それが球磨の愛情表現なんだよ。きっとさ」
「誰がハルと仲良ひだクマぁ〜」
「ちくしょッ!! その有り余る凶暴さで川内とこれから夜戦とかしてこいよッ!!」
「なに夜戦?!! ハルが私と夜戦してくれるの?!!」
「どこをどう聞き間違えたら俺が川内と夜戦することになるんだよッ!!」
「ハルとの夜戦は許さんクマァ〜……ハルの夜戦の相手はこの球磨だクマァ〜!!」

 球磨のこの言葉を聞いた瞬間、ちょうど日本酒を口に含んでいた提督と隼鷹が同時に酒を吹き出し、北上はニヤリとほくそ笑んで、雑魚寝していた加古は上体をガバッと起こした。

「なに?! なんか今私の目が一気に冴える一言が聞こえた気がしたんだけど?!」
「いやちょっと球磨姉……それは大胆発言すぎるでしょ……」
「何が大胆だクマァ〜。この球磨が直々にハルの相手をひてやるクマぁ〜」
「まったくだ……まさか球磨がそんなことを口走る日が来ようとは……ハル」
「はい?」

 提督さんは立ち上がり、急に俺の前まで来ると、俺の両肩をガシッと掴み、まっすぐに俺の方を見て、真剣な眼差しで……でもほっぺた赤いけど……至極真面目なトーンでこう言い放った。ほっぺた赤いけど。

「この鎮守府の提督として……いやもはや一人の男としてのお願いだ!! 球磨の心意気に応えてやってくれッ!!」
「……ハイ?」
「いい子なんだ! いい子なんだ球磨は! 隼鷹には負けるけど、魅力的な子なんだよこの球磨は! 隼鷹には負けるけど!!」

 唐突な提督さんの大胆発言を受け、今度は隼鷹が顔を真っ赤にして『ハアッ?!』と悲鳴を上げている。なるほど……北上、お前がよくニヤニヤしてる気持ちがわかった気がする。

「ちょっと何言ってんの提督!」
「マイスニートハニー隼鷹に比べたら全然だけど、球磨はいい子なんだよハル!!」
「ちょっとやめてマジで恥ずかしいから!」
「昨日だってハルからもらった耳掃除用ローションで丹念に俺の耳を掃除してくれたし、おれがしてあげたら顔真っ赤にして『ありがと』ていってくれたりして隼鷹そらもうすんげーカワイイ俺だけの天使だけど、球磨もいい子なんだよ!!」
「まじかー。いやー提督さん、うらやましいっすニヤニヤ」
「隼鷹、愛されてるねニヤニヤ」

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