4部分:第四章
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第四章
「ああ、美菜ちゃん」
「何、ひいお婆ちゃん」
美菜子も居間の曾祖母に顔を向ける。曾祖母は居間のコタツの中でテレビを見ながら座っている。周りには家の猫達が集まっている。
「何かあったの?」
「メール届いた?」
こうだ。流石に年齢を感じさせる声で曾孫に言ってきた。
「メールは」
「メールって?」
「実は携帯を買ってね」
そのコタツから美菜子に顔を向けてだ。こう言うのだった。
「それでメール送ったけれど」
「?まさか」
その話を聞いてだ。美菜子も察した。
そしてそのうえでだ。曾祖母のいる居間に入ってだ。あらためて言うのだった。
「あのメールひいお婆ちゃんが?」
「あっ、メール届いたのね」
曾祖母は曾孫の言葉を聞いてにこりと笑った。
「よかったよかった」
「よかったじゃないわよ。あれ何よ」
「あれって?」
「御前の秘密を知っているって。あれ何なのよ」
「だから?美菜ちゃん元気?て送ったんだけれど」
「全然違う言葉じゃない。何処をどうやったらあんな言葉になるのよ」
「だってひい婆ちゃん」
ここで曾孫の顔を見て穏やかな調子で話す。焦りに焦って明らかに冷静さを失っている曾孫とは正反対だ。違うのは年齢だけではなかった。
「メールとかはじめてだから」
「それでなの!?」
「文字見て打ったけれどね」
「けれど間違えたのね」
「最初のメールは。美菜ちゃんって考えてたからね」
文字の間違いはだ。全く気にしていないのだった。
「それで送ったけれどね。届いたのね」
「そもそもメアド誰に聞いたのよ」
「華ちゃんだよ」
美菜子の母だ。相手から見れば可愛い孫の嫁だ。
「華ちゃんに入れてもらって。それでね」
「それでだったの。全く」
美菜子は話の全てがわかった。そのうえでだ。
はあ、と溜息を出してがっくりと肩を落としてだ。こう言うのだった。
「本当に何かって思ったわよ」
「驚いたのかい?」
「驚いたも何も」」
溜息を出し終えてからの言葉だ。
「お陰で。彼氏のことも言っちゃったし」
「彼氏って?」
「何でもないわよ。気にしないで」
「いやいや。彼氏ならね」
ここで曾祖母は楽しげな顔になってだ。その顔で曾孫に言うのだった。
「美菜ちゃんと結婚して。ひい婆ちゃんにひいひい孫をだね」
「だからそんなのは」
「いやあ、楽しみだねえ。美菜ちゃんがお母さんになるんだね」
「そんなのお兄ちゃんの方が先に決まってるから」
こんなことを話しながらだ。美菜子はマイペースな曾祖母に呆れていた。話の真相はわかった。そのことにほっともしながら。そんな曾祖母の前にいたのであった。
携帯メール 完
2011・2・26
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