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俺の四畳半が最近安らげない件
先住民
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「たとえばだ」
「……はぁ」
 闖入者は、ビール片手にスルメを齧る俺にはお構いなしに、両手(?)を広げて滔々と語り始めた。
「お前が数年過ごしたこのアパート。急な出張で暫く空けることになったとするな」
「……妙に、現実的?ですね」
一応、敬語で応じる。奴と俺との位置関係が今ひとつ明白ではない今、ムダに刺激しそうな言動は控えることにする。
「家賃…は払ってたような払ってないような。そもそも家賃が発生してたのかどうか…まぁ、置いといて。そうだな2〜3年、家を空けた」
「………」
「家を出る際、部屋の片隅で地味に繁殖していたシーモンキーがさ、なんかもこもこもこって急激に増えて」
どうにもシュール系の話を聞かされる羽目になりそうだ。長丁場にならないことを祈る。
「ついには人語を解するようになったりしてな。サイズもそうだな…お前と同じくらいになって」
俺の反応を見るように、言葉を止めて両手を僅かにひらひらと揺らめかせる。どうもここらで、彼的には起承転結の『転』のあたりのつもりらしいが、俺には依然として何が何だかさっぱりだ。
「数年振りに帰ってきた我が家で、そいつが普通に暮らしてたらどうする」
「暮らす…?」
「暮らすんだよ。俺ずっとここに住んでました敷金の権利俺のものですみたいな顔して」
一旦言葉を切ると、奴は声のトーンを2段程落として呟いた。
「しかもよ、よくは知らないがどうも遠縁らしい奴が、ミイラにされてんだ」
「猟奇系ですか」
「ちげーよ最後まで聞け。そんでそのミイラをよ……そいつが旨そうにしゃぶってるんだ」
「やっぱり猟奇系だろそれ」
敬語が面倒になってきた。
「じゃあ猟奇でいいよ。…で、お前だったらどう思う」
「と云われても……」
シーモンキー的な何かが、自分にちょっと似た、基本的には赤の他人のミイラを一心不乱にしゃぶっている様を想像する。
「部屋、間違えたかな…とか思って、一旦家を出る」
「それ!まさにそれだよ!…今の俺そんなかんじ」
「………あ」
 口に咥えていた『あたりめ』を落とす。そうだ、あたりめだ。そしてこいつは。
 ワンルームアパートの出入り口に立つ、烏賊に良く似た何者かが、両手というか触手のような器官を、そっと垂れた。
「これが、お前がおととい『白木や』で叫んでいた、俺への疑問の答えだ」



金曜日の夜。サークルの仲間と学校の近くの『白木や』で、オールで飲み明かしていた時。
で、どうなんだ。結局宇宙人はいるのかどうかという話になった…ような気がする。
いいかんじに酒が脳にこぼれ始めた俺は、叫ぶように言い切った。
「いないね!」
「おぅ、言ったれ、もっと言ったれ!」
「いるんだったらよ、出てくるだろ!?政府とかに声かけるだろ!?科学発達してるんだから、地球人とか全然脅威
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