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鎮守府の床屋
前編
7.提督だったら……いいよ
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 暁ちゃんの職業見学から数日が経ち、季節は夏真っ盛り。敷地内のいたるところに木が植えてあるこの鎮守府は、外を歩けばほぼ確実にセミがこちらに向かって飛んでくるという、地獄の様相を呈している。

 もっとも、球磨をはじめとしたごく一部の艦娘たちはその状況を待ち構えていたかのように、セミを捕獲してはバーバーちょもらんまに持ってくるという迷惑この上ない遊びで日々楽しそうに過ごしているが……

 おかげで最近は店の中にいても安心できん。セミが自発的に店内に侵入してくるということはないが、あいつらが来たら絶対に店内にセミが解き放たれる……おかげで落ち着いて客の待機が出来ない。今日も今日とて、そわそわしながらコーヒーを飲み、客の来店を待ちながら考え事をしていた。

 実は、暁ちゃんの職業見学からこっち、俺の中でずっとひっかかっていたことがあった。

――床屋さんの仕事って、シャンプーして髪の毛切ってあげて、それだけ?

 この鎮守府にきて約半年。人数そのものは少ないが、シャンプーをすれば必ず『足の裏がかゆい』と言い出すお客様たちにも恵まれ、バーバーちょもらんまは盛況といっていい。軍からもそう悪くない手当をもらっている。

 だが、暁ちゃんのあの一言が、俺にはどうにもひっかかっていた。確かに言われてみれば、このバーバーちょもらんまが開店して以来、やっている事といえば……潮風で傷んだ髪の散髪とトリートメント、そしてシャンプー……提督さんにはそれプラス髭剃り……そんな感じだ。別にいいといえばいいんだが……

 このバーバーちょもらんまは、もっとみんなが喜ぶサービスを提供できるのではないだろうか。日々命がけで戦う提督さんや球磨たち艦娘のみんなの慰安のために、このバーバーちょもらんまは営業している。

 ならば散髪やシャンプー、髭剃り以外にも、もっとみんなが喜ぶサービスを提供するべきではないだろうか? もっともっと……新しくて、みんなが喜びむせび泣くサービスを始めるべきではないだろうか……? もっと艦娘のみんなが『ハルがきてくれてよかったよぉぉおおいいいいいおおおおおおいいいいい!!!』『ハルゥゥウウウウ!!! 球磨たちが間違ってたクマァァああ!!!』と喜んでくれるようなサービスを、提供すべきではないのだろうか……それがこのバーバーちょもらんまの使命なのではないだろうか。

 しかし、いざ何か新しいことをやろうとしても、何がニーズがあるのかさっぱり分からん……一応『髪を染めたい!』というニーズにも応えられるようにブリーチなんかもおいてあるんだけど……ココの子たちってブリーチはおろか髪型を変えることすら抵抗があるのかないのか……一向に『髪を整える』『傷んだ部分を切る』『シャンプーする』『足の裏をかく』以外の注文がない。足の裏は断固拒否だが……こんな
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