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されど咎人は焔と遊ぶ
02 謎の女
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か気配も無く背後に移動していたヒューズの返答にエドワードは心底驚いた。
 あからさまにビクッと肩をはねさせて勢い良く振り返る。

「良い機会だ、一度読んでみるといい。レイのアレは参考にするにゃもってこいだ」

 ちったぁ報告書の“書き直し要再提出”が減るかもしれないぜ? とヒューズはニヤニヤ笑いながら言った。だがそのスクエア眼鏡の奥、金を塗した緑の瞳はちっとも笑っていない。

 読んで学習し実践せよ、出来ないとは言わせない、お前はロイが自ら認め推した国家錬金術師だろう。
 その信を裏切るな、足を引っぱるのならば容赦はしない。

 その視線にはいつもの飄々とした、あるいは柔らかな父性愛に満ちた温かみは欠片もない。
 共に地獄を見、修羅に身を(やつ)し、罪業の奥底からそれでも光を見据えて立ち上がった親友への底知れぬ深い信頼から来る、かつてここにいるロイの部下たちにも向けた事のある抜き身の刃物のような視線。

 それは彼らが東の砂漠の地で何を見、何を為し、何を思い、そうして何を目指すのか、未だその詳細を知らぬエドワードには僅かな畏怖すら抱かせるものではあったが、ある意味信頼されているという証でもある。

 『どうでもいい』と判断されたならばこんな眼は向けられない。
 厳しさはただ許されるだけの子供に向けるものとは違う、1人の個人として成長を促す期待を込めたそれだ。

「ああ、そうさせてもらう。………けど、その前に。 レイって、何者?」

 訝しげに黒髪の女を指差すエドワードに、おや、と目を向けたのはロイだった。

「鋼のには紹介していなかったかな?」
「…そういやそうか。よく皆から話は聞いてたから初対面って感じしなかったわ」
「ロイ、レイも…お前ら本当変なとこ抜けてんなぁ…」

暢気な会話に今にも噛みつきそうなエドワードを放って2人は肩を竦めてみせる。
そういう相手を逆撫でするような仕草は本当にそっくりだ、とヒューズは呆れたような苦笑を洩らした。



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