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ゲーム
第五章

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「あの小説で盲目の人斬り侍出てたからな」
「あれっ、あの作品未完だよね」
「作者三十年以上書いていたけれどな」 
 その大菩薩峠をだ。
「それで死んだからな」
「未完で終わったんだね」
「その小説のそいつみたいだな」
 こう言うのだった。
「そいつは死んでないけれどな」
「人斬り侍というか悪役の結末は」
「成敗されて終わりだな」
「まあ僕は生き返ったけれどね」
 勿論ゲームの中でだ。
「それでもね」
「ああ、倒されたことは事実だな」
「凄く強い賞金稼ぎにね」
「お約束だな」
「そうだね、けれどやっつけられたことも含めて」
「楽しんだんだな」
「いいものだね、悪役も」
 項垂れながらもだ、雄太郎は久則に笑って話した。
「これからも続けるよ」
「そうするか」
「人斬り侍もね」
「貴族になるとかいうのはないんだな」
「結局そっちには興味がなくなったよ」
 貴族の立場で悪いことをすることはというのだ。
「これからも人斬り侍に徹するよ」
「そうするんだな」
「うん、倒されてたけれど」
 それでもというのだ。
「またやるよ」
「そうか、じゃあ俺もな」
「久則もだな」
「トレジャーハンター続けるか」
「ゲームの楽しみ方もそれぞれだね」
「悪役にしてもな」
「うん、悪役といってもね」
 それこそとだ、雄太郎は自分から言った。
「下克上とか悪政とかだけじゃないよ」
「そういうことなんだな」
「そうだね、じゃあ妖刀をさらにね」
「血を吸わせてな」
「凄い刀にしていくよ」
「刀に憑かれてるな」
 笑ってだ、久則はこうも言った。
「妖刀に」
「あっ、それもね」
「悪役によくあるな」
「じゃあこれからも妖刀に憑かれた人斬り侍として」
「やっていくか」
「そうするよ」 
 雄太郎は項垂れた気持ちを復活させてだった。
 そのうえでゲームを続けていった、だが普段の彼は彼のままでだ。久則にも明るい顔でいつも接し続けていた。
「さて、今日も」
「やるか」
「うん、斬っていくよ」
「それも楽しんだな」
「楽しいよ、倫理も武士道も関係なく斬っていくだけでもね」
「完全な人斬り侍もか」
「そう、ただ斬りたいから斬る」
 プレイヤーもNPCもモンスターもだ。
「それも楽しいよ」
「ならいい、楽しんでいけ」
「そうさせてもらうよ」
 笑って言う雄太郎だった、そしてこの日も人斬り侍としてプレイするのだった。それを心から楽しみながら。


ゲーム   完


                         2015・10・17
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