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機動戦士ガンダム0091宇宙の念
宇宙編
月決戦編
第26話 二つの光

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空っぽの個室。
自分の匂いが染み付いた、兵器臭いコックピット。
ここだけが、自分の居場所。
無限に広がる宇宙だけが、自分の重たい心の置き場。
私は強化人間だ。
連邦軍のオーガスタで強化され、昔の記憶もない。
覚えているのはMSの操縦の仕方、近接格闘術、兵器の取り扱い方など、同年齢の普通の人とはかけ離れたことばかり。
研究所には、私と同年代の子も多かった。
何度も何度も機械に囲まれた部屋で体を調べられ、薬も幾つも投与された。
あるとき、研究所の友達がこっそり教えてくれた。
「私達は、戦う為に命を削られている。だから寿命は長くないの」と。
彼女はMSのテスト中、暴走したサイコミュに飲まれ、味方に殺された。
私達はモルモットの様に扱われ、心というものは次第になくなっていった。
だからだろう、彼女の死に悲しみの念を抱かなかったのは。
そう、私は人ではないのだ。
そんな自分でも、充実していると思えるときがある。
あのふたりと話していると、冷え切った機械の心が暖かくなるのがわかる。
軍において、情けなく不甲斐ない感情なのはわかっている。しかし、たとえ機械の心でも、私には確かに人の血が流れている。
私は、なんの為に生まれてきたのだろうか。
この宇宙に飛び出せば、答えは見つかるだろうか。
わからない、わからないことだらけだ。
けど、自分の体は優等生らしい。きっちり人を殺める為に働いてくれる。
もう、相手の死に際の怨念に心を潰されることも無くなった、いつからだろう。
それと同時に、寂しい心を持ったのは。

私は今、戦場にいる。
月を防衛し、なんとしても敵機を月に取付かせるわけにはいかない。
この命を懸けてでも、守り通してみせる。
あのふたりの眩しい光、私の心の不安を払ってくれる。
操縦桿は、私のノーマルスーツのグローブにしっくりと収まる。
このレギーナも、私と運命を共にするであろう機体だ。しかし私は、この日に死ぬ気もさらさらない。
こんな気持ちになれるような心をくれたふたりの元に戻るために、死ぬわけにはいかない。
大好きなあの二つの光を消さないように、私は戦う。
私はナナ・リーブルズ。
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