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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百八十六話 遠征軍帰還
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より同盟の事ですが危険なのは政府の動きです。焦って強硬策を採らなければ良いのですが……」
「馬鹿な、そんな事をすれば却って民衆は反発するであろう。彼方此方で暴動が起きかねぬ。一つ間違えば同盟は分裂するぞ。その程度の判断も出来ぬほどハイネセンの連中は愚物なのか?」
ヴァレンシュタインが首を横に振った。

「いえ、そんな事は有りません。しかし背に腹は代えられぬと考える可能性は有ります」
背に腹は代えられぬ? 如何いう事だ、ヴァレンシュタインがじっとこちらを見ていた。気圧されるような感じがした。嫌な予感がする、この男がこんな目をする時には決まって碌な事が無い。何を考えた?

「混乱が酷くなれば帝国政府は同盟政府に統治能力無しと判断して併合を前倒しにするのではないか……」
「うむ」
思わず仰け反ってしまった。なるほど、それが有ったか……。予感が当たったわ、碌でもない。
「有り得るの。……となると或いはそれが帝国の狙いかと邪推するかもしれんの」
ヴァレンシュタインが“それも有りそうな事です”と言って紅茶を一口飲んだ。私もカップを口元に運んだ。香りが薄い、気分が落ち着くかと思ったが……。次はもう少し香りの強い物にしよう。一口紅茶を飲んだ。

百五十年互いに相手を罵りながら戦争を続けてきた。今後三十年かけて統一するという言葉が信じられないのも無理はないが……。
「妙なものじゃ。我らが反乱軍、いや同盟政府の心配をするとは……。こんな日が来るとは思わなんだわ」
思わず苦笑が漏れた。ヴァレンシュタインも笑う。
「新銀河帝国を創るためです」
「……そうじゃの」
苦笑は止まった。

新銀河帝国。人類を統治する唯一の星間国家。帝国人には新しい国家を創るという意思が個人差は有れど皆が持っているであろう。故に三十年かけて新国家を創るという事を皆が無理なく受け入れられるのだと思う。……私はあと三十年を生きる事は叶わぬだろう。新銀河帝国の誕生を見る事は出来まい。だが帝国の進む方向を見る事は出来る。政治家として果実を味わう事は出来ずとも国の歩む道を示す事は出来たのだ。十分だ、満足して死ねるだろう。だが同盟は如何であろう?

「同盟人には新たな国を創るという思いは無いかもしれん。有るのは征服されたという屈辱だけか……」
「そうですね、自分達の将来への不安も有ると思います」
「そうじゃの。さて、如何する? ……不安を取り除くとなれば保証をせねばならん。……憲法を創るか? 考えているのであろう?」
ヴァレンシュタインの眼を覗き込むと微かに眼が笑った。

「宜しいのですか?」
「何を白々しい事を。ブラッケやリヒター達にも憲法が必要だと言ったのであろう? 気付かぬと思ったのか?」
「そうは思いません」
強かな男よ。あの二人を通してこちらに自分
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