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渦巻く滄海 紅き空 【上】
百  ナルト死す
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(――こんな化け物を抑え込んでいたのかよ…っ、)

傍らのナルトに視線をやった多由也は、改めて彼の強さに感服した。



別行動だった為、白と君麻呂がこの場にいないのは幸か不幸か。
ナルトを崇拝する彼らが、この情景を目にして、どんな行動を取るか。考えただけでも頭が痛い。
一見素直そうな忠犬らの手綱を握っているのは、この中で最年長の再不斬でも、多由也でも、他の誰でもないのだ。

両者共に白い印象を思わせる二人の少年が唯一従うのは、ただ独り――うずまきナルト、その人だけ。
忠犬が狂犬になる可能性も大いにある故、彼らの不在はやはり不幸中の幸いだろう。
だが、だからと言って現状が最悪なのは変わらない。


ひらひらと宙を舞う漆黒の羽根。

直後、空間そのものを引き裂くように零尾は黒い翼を大きく広げる。雷雨など物ともせず、再不斬達の攻撃を柳に風と受け流して、化け物は飛び立った。

零尾の巨躯に覆われ、曇天は一層暗がりに沈む。完全なる闇に世界は呑まれ、多由也達の視界を黒一色に塗り潰す。
この絶望的な局面を打破できる唯一の存在は、未だ目覚めない。


「…くそッ、」
頭上の化け物に、再不斬が思わず悪態を吐く。

周りを見渡せば、ただでさえ荒れていた土地はもう見る影も無いほど無残な景色に成り果てていた。同様に、零尾の暴走を食い止めようと奮闘していた仲間達は皆、何れも膝をついている。
どれだけ攻撃しても傷一つつかない零尾との力量差に、彼らの顔には一様に疲労と絶望の色がありありと浮かんでいた。

凄まじい勢いで伸ばしてくる妙な触手にも手を焼いたのに、飛翔出来るともなると、もう手の打ちようが無い。

無意識にナルトのほうへ視線を走らせる己に自嘲し、再不斬は天を再び仰ぐ。
冷や汗が音も無く額を伝っていった。



























山岳地帯にある『鬼の国』。
その更に更に奥に築かれた遺跡のある谷底を、五つの人影が静かに俯瞰していた。

数人の兵士達が警備している遺跡を眼下にし、人影の一つが嗤う。
長い黒衣に身を包んだ男は、薄闇の中、にんまりと眼を細めた。
「――いよいよだ…」


谷風が男の黒髪と、彼の背後で控える四人の青年達の髪を靡かせる。
谷底の松明の明かりが崖上に佇む侵入者達をぼんやり照らし出しているが、警備の兵士達は誰一人として気づいていない。

「いよいよ、我らが野望の成就する時が来た…」

さっと黒髪の男が命令を下すと、揃って地を蹴った青年達が崖壁を一気に下り出す。
遺跡を守る兵士達が侵入者の存在に気づいた時には、もう遅かった。


瞬く間に武装していた兵士達を片付ける。遺跡を警備してい
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