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イエ
第四章

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「それを払底も出来るぞ」
「それも可能ね」
「それじゃあ」
「このお祭りを成功させよう」
 市民達は笑顔で言う、そして彼等も祭りに協力した。ブカレストはまさに官民一体となりその祭りに向かっていた。
 そしてだ、祭りの日にだ、それを目当てに欧州中から集まってきた観光客達は誰もがこんなことを言っていた。
「吸血鬼出るな」
「ルーマニアだしな」
「ルーマニアは吸血鬼だ」
「ここは吸血鬼の国だから」
「色々な吸血鬼が出るか」
「ヴァンパイアフェスタか」
「ワインは出るな」
 これも間違いないというのだ。
「赤いワインは血だから」
「実際ワインの宣伝もしている」
「それならワインも出て」
「かなり飲めるわ」
「吸血鬼も出る」
「さあ、楽しみだな」
「どんな祭りか」
「そろそろはじまるわよ」
 まさに欧州各国、そして中にはアジアやアメリカからも来ている者がいた。彼等は誰もが吸血鬼祭りだと思っていた。
 ルーマニア政府もだ、市民にはリハーサル等を見せていたが観光客にはサービス等を知らせていたが具体的には何を出すかは言っていなかった。そこは秘密だった。
「さて、とくと御覧あれ」
「吸血鬼以外のルーマニアを」
「これは凄いぞ」
「ハンガリーにもブルガリアにも負けていない」
「これが新たな観光の柱になるんだ」
「吸血鬼に加えて」
 彼等はこう言っていた、そのうえで祭りがはじまるのを待っていた。
 そしてだ、その祭りがはじまると。
 観光客は驚いてだ、口々に言った。
「何だあれは」
「吸血鬼じゃないぞ」
「吸血鬼は一人もいないぞ」
「音楽は」
 その音楽はというと。
「郷土音楽か?」
「この国の」
「それか」
「そういえば」
 誰もが気付いたのだった、ここで。
「この国も独自の文化がある」
「吸血鬼以外にも」
「それで音楽もか」
「ちゃんとあるんだな」 
 その音楽を聴いたのだ、まずは。
 そしてだ、その次は。
 彼等をもてなしに着飾った美女達が出て来た、その彼等は。
 白地のブラウスに様々な形をしている丈の長いスカート、頭には赤いスカーフがありそれで頭を完全に巻いている。ブラウスには繊細な刺繍と織地がある。胸や袖のところにそれが施されている。
「あのブラウスいいな」
「奇麗な刺繍ね」
「スカートの形もいいし」
「腰の帯もね」
「色々な色で」
「可愛い」
「何か凄くいいわね」
 その服を着て言うのだった、そして。
 観光客の一人がだ、その服を着ている少女の一人に尋ねた。
「君達が今着ている服は何ていうかな」
「イエです」
 少女は観光客ににこりと笑って答えた。
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