第二十二話 最初の卒業式その九
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「けれどそれも終わりね」
「今度は楽しい大学生活よ」
「楽しいんですか」
私は御二人のお言葉に突っ込みを入れました。
「大学生活って」
「まあ高校よりは楽よね」
「お酒もおおっぴらに飲めるしね」
またお酒でした。どうしてお酒から話が離れないんでしょうか。
「それだけでもかなり」
「楽しみよね」
「ちっち」
御二人が心からお酒を楽しみにされている御顔をされているその横で。長池先輩が私に顔を向けて声をかけてくれました。
「はい?」
「本当にまた会いましょうね」
「は、はい」
先輩にこんなこと言われるなんて。私から言わせてもらおうと思っていたのに。
「御願いします、是非」
「その時は。お酒はまあ置いておいて」
「駄目ですよ、それは」
楽しそうに笑う先輩に対して真面目に言い返しました。
「まだ十九歳と十七歳ですから」
「だから。お菓子を一緒に食べましょうね」
「お菓子ですか」
「そう、ドーナツとか」
天理駅前にはミスタードーナツがあります。場所がかなりいいので凄く繁盛しています。
「食べましょう、それでいいわよね」
「はい、ドーナツ大好きです」
本音が出ちゃいました。甘いものは大好きなんです。
「高校の時みたいにまた先輩とドーナツを一緒にですね」
「ずっとよ」
「ずっとですか」
「おぢばは不思議屋敷よ」
これもよく言われることです。
「とても会えるような確率じゃないのに思わない人と出会ったりなんてことが普通にある場所なのよ」
「普通にですか」
「だから。また会えるわ」
このことを言われました。
「ずっとね。お互いの詰所どころか住所もわかってるし」
「そうですね。それは」
「だから。ちっち」
「はい」
「また一緒にドーナツを食べましょうね」
最後の最後まで優しくて奇麗な先輩の笑顔でした。先輩の昔のことはわかりましたけれどそうした残酷な心を克服された先輩は。本当に奇麗な笑顔を私に見せてくれました。私の高校一年の生活は先輩のおかげで最高に素晴らしいものでした。長池先輩、有り難うございました。そして、また宜しく御願いします。
第二十二話 完
2008・8・15
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