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ソードアート・オンライン リング・オブ・ハート
34:笑わせないで
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まま……人を信じられないまま、永い時を冷たい牢屋の中で過ごす事になる! 私はそんなの、耐えられないっ……!」

 マーブルは叫びながら、片腕の袖で涙を拭う。しかし、その悲しみの表情までは拭われない。

「そんな……そんなことをする位ならっ……! いっそ私はあなた達を……!」

「なんで、そこまでして……」

 俺の呟きに、マーブルは視線と共に此方へと大鎌の刃を向けた。

「私には、今までこの子の傍にいて保護してきた責任がある……! そして、死神と気付けず、ずっと看過し続けてしまった責任があるのよ! だから、この子の罪も、全て私一人が背負うわ……! そして最後に、この子を変えてあげられなかった私は、この身を犠牲にしてでも、せめてこの子が自分の思うように自由に生きさせてみせる……。それが例え、犯罪者の道であったとしても……!」

 そして彼女は、喉を微かに震わせながら、大きく息を吸って言った。


「――全ては、ユミル(この子)を守る為……!!」


 そこには、狂おしいまでの庇護と慕情、慈悲すら織り交じった涙で頬を濡らす、一人の保護者……いや、母親がいた。

「……マーブル」

 ここで、それらをずっと黙って聞いていたユミルが、自分を庇う位置にいる彼女の背中へ向かって歩みだし、そしてその横に並んだ。
 マーブルは慌てて手の甲で涙を拭って顔だけ振り向く。

「ユミル……今すぐここから逃げなさい。この場は私が全力で食い止める。私の事は気にしなくていいから、この隙に少しでも遠く――」


「――笑わせないで」


 その時。
 トスッ、という、乾いた音が聞こえた。

「…………え?」

 マーブルはきょとんとした表情と同時に手から大鎌を落とし、片膝をついた。
 ユミルが、空いた片手を真横へと振り払う動作をしたと思った瞬間。

 マーブルの太腿に、ユミルのスローイングナイフが突き刺さっていた。

「……な……」

 彼女のHPは数ドット減り、緑色の明滅する枠に覆われていた。状態異常ステータス、麻痺毒に侵されていた。

「なんで……うっ!?」

 ユミルはそれだけに留まらず、震える体で振り向こうとしたマーブルの首筋の裏を、手刀で叩いた。人が昏倒する急所だ。

「なんで、だって……? ボクは最初から、ずーっと前から言い続けてるじゃない……」

 崩れゆくマーブルに向けて、ユミルは先程以上に冷徹な目で彼女を見下ろし、低い声で言った。

「――――ボクは、誰一人も信用なんかしちゃいない、ってね」

「…………ユミ、ル……」

 一瞬、マーブルは彼へと手を伸ばしかけ……そして気絶し、バタリとその場に倒れた。そして動かなくなる。
 ユミルはそんな彼女を数秒見下ろし
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