暁 〜小説投稿サイト〜
喧嘩
3部分:第三章
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

第三章

「だからどうかなって思ってな」
「食べる?ほら」
 ここで皆はケーキだけでなく紅茶も出してきた。
「紅茶もあるしな」
「どう?遠慮はいらないわよ」
「ふうん。それだったらよ」
「それじゃあ」
 とりあえず二人はそのケーキを手に取って食べはじめる。皆の目論みはまずは成功した。
 ケーキは一個だけでなくまだ出す。幾らでも食べさせてそれで機嫌をなおさせる腹なのである。そうやってケーキを食べさせて紅茶を飲ませて機嫌が随分なおってきたと見たところでだ。
「よしっ」
「今ね」 
 ここで皆顔を見合わせて目で合図をする。
「席をな」
「やるわよっ」
 また目で合図をしてそのうえで二人の席を動かした。それぞれ九十度に動かす。それによりそっぽを向き合っている状態からケーキのある本来の正面に向いていた二人を向かい逢わさせたのである。
 ところが。
 今回もであった。またしても失敗であった。
 二人は顔を見合わせるより前に再び顔を背けてしまったのだった。良美は左に、美奈は右にそれぞれ顔をやって。それでかわしてしまったのであった。
 結果としてこれで同じであった。結局ケーキ作戦も失敗に終わったのであった。
 皆はこれには唖然となった。席を戻すのもそのままで再び作戦会議に入った。そうしてまた教室の端においてあれこれと話すのだった。
「今度はどうする?」
「どうするって言われても」
「どうしようかしら」
 話し合ってもどうしていいかわからない。そのわからないうちにだった。
 一時間目のチャイムが鳴った。そうして先生が入って来た。そして二人を見て言うのだった。
「あの二人は何があったんだ?」
「まあそれはまあ」
「ちょっと。色々あったみたいですけれど」
 皆も返答に実に困っていた。
「ああしたことになっちゃって」
「気にしないで下さい」
「気にしないでいられると思うか?」
 先生は皆に対してその顔を背け合ったままの二人を見ながら言う。二人は教室で向かい合わせになったままでそれぞれ首を背け合ったままでいた。とにかく滅茶苦茶険悪なムードが漂い続けている。
「あれで」
「そこを何とか」
「授業してもらえば」
「御前等随分強引じゃないか?」
 先生はそんな彼等の言葉を聞いてまた述べた。
「教室に爆弾があって平常心で授業ができるのか」
「とりあえず爆発はしないんで」
「そこは何とか」
「爆発はしないのか」
「多分そうだと思います」
「今のところは」
 返答は実に曖昧なものであった。
「だからどうぞ」
「授業を」
「ああ、わかった」
 先生もここで遂に諦めるのだった。
「じゃあ授業やるぞ。いいな」
「はい」
 とりあえずは授業は行われた。甚だ不自然であるがそれでもだった。そうしてとり
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ