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人魂料理
5部分:第五章

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第五章

「あれな。人魂を食べたらな」
「ああ」
「どうなったんだ、それで」
「口から出て行って顔を取られたんだよ」
 そうだったというのである。
「後で主人公の活躍で顔は戻ったけれどな」
「ああ、のっぺらぼうになったんだな」
「食ったら」
「そうはならなかったけれどそのまま出て行かれたよな」
 秀が言うのはこのことだった。
「尻からだけれどな」
「そのままな」
「それは同じだな」
「だろ?同じだよな」
 ここでも言う秀だった。
「それはな。しかしだよな」
「人魂って食われても全然平気なんだな」
「すぐに出てそれでまた飛ぶんだな」
「そうなるんだな」
「ああ、そうなんだな」
 また言う秀だった。彼もその人魂達を見上げている。
「美味いけれどこれじゃあな」
「食ったって実感ないよな」
「満腹感が得られないしな」
「これじゃあな」
「けれど。何かほっともするね」
 秀はこんなことも言った。
「食べて死なないっていうのはね」
「まあそうだな」
「結局何かを食べるって何かの命を貰うことだからな」
「それが肉でも野菜でもな」
「そうなるからな」
 皆こう考えていく。食べるということは何かということをだ。それは突き詰めていけばそういう考えに至ってしまうのであった。
 それでだ。彼等はさらに話していく。
「食べたことになるかどうかわからないけれどな」
「それでもな。もう人魂はな」
「ああ、放っておくか」
「そうするか」
 こう結論を出した。そしてだ。
 家の窓を開けると人魂達はそこから外に出てだ。何処かへと去ってしまったのだった。秀はその人魂達を見送ってからあらためて皆に話した。
「それじゃあだけれど」
「ああ」
「どうするんだ?」
「まだ衣はあるし油もあるしね」
 言うのはこのことだった。
「食材もあるし。烏賊と鰯ね」
「じゃあそれ揚げて食うか」
「そうするか」
 皆も彼のその提案に頷いた。そしてだ。
「俺ビール買ってくるな」
「それで一杯やるか」
「楽しくな」
「うん、そうしよう」
 秀もビールと聞いて笑顔になった。
「それじゃあね」
「よし、じゃああらためて食うか」
「それで飲むか」
「そうするか」
 皆気持ちを切り替えてまた食べることになった。だが彼等はこれ以降人魂を食べることはなくなった。そして捕まえることもだ。二度としなかった。


人魂料理   完


                  2010・11・25

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