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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三十二話 真相(その2)
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皇帝になられてからじゃ。勘違いするでないぞ。廷臣たちの罪を暴くためではない。できるだけ政治の犠牲者が出ぬようにするためじゃ。わしが手を下したものは、やむを得ぬものだけじゃ。陛下にも御理解をいただいておる」

 これが真実なのか。何処かで一つ歯車が入れ替わっていれば、フリードリヒ四世は名君として君臨したかもしれない。その傍には忠臣グリンメルスハウゼンがいただろう。そうなればラインハルトはどうなったのだろう。フリードリヒ四世を憎んだろうか。もしかすれば帝国の若き名臣としてフリードリヒ四世を助け、帝国の全盛時代を作り出したのではないだろうか。しかし現実には凡庸な皇帝と凡庸な廷臣、そして若き反逆者がいる。

「卿は貴族になる気は無いか」
「は?」
「卿はリメス男爵家の血を引いている。そうじゃろう」
「ご存知なのですか」

「うむ。リメス男爵家を再興するなら手伝うがどうじゃ」
「御無用に願います」
「ふむ」

「小官は貴族になりたいとも、貴族になる事が名誉だとも考えた事はありません」
「そうか。フォッフォッフォッ、良いぞ、良いぞ、まさか卿がそのような覇気を持っているとは。楽しみじゃの、卿とミューゼル少将、これからどのように生きるのか。フォッフォッフォッ」

 俺はそれを機にグリンメルスハウゼン邸を辞した。貴族になどなる気は無かった。いや貴族どもを叩き潰そうとする俺にはフォンの称号など必要ない。俺の名はエーリッヒ・ヴァレンシュタイン、それ以上でも以下でもない。 



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