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舐め終わってから
舐め終わってから
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                    舐め終わってから
 池上裕美子は晩御飯を食べ終わりだ。
 食後のデザートにあるものを取り出した。それは何かというとだ。
 キャンディだ。それを取り出し袋から出して口の中に入れたのである。
 口の中に入れると舐めはじめる。その甘さが口の中全体を支配する。味はミルク味だ。その優しい甘さが裕美子にとってはこのうえなく美味なものだった。食後のデザートと言っていいかわからない位ささやかなものであるがそれでもだ。その甘さは彼女にとっては最高のデザートであったのだ。
 しかしだ。舐めているとだ。その彼女にそれまで一緒に食べていた母親がこう言ってきたのである。
「食べ終わったら後片付けしなさい」
「あっ、うん」
 裕美子は母の言葉に頷いてすぐに席を立ってだ。そのうえで食器をなおしはじめた。食器洗い器の中に入れて一気に洗う。その方が水道代や洗剤を使わなくて済むので経済的だとだ。母も喜んでいる。
 食器を全て食器洗い器の中に入れてまたキャンディをゆっくりと味わえると思った。しかしである。 
 母は今度はだ。裕美子に対してこんなことを言ってきたのである。
「ちょっと牛乳瓶外に出してきて」
「牛乳瓶って?」
「だから牛乳瓶よ」
 こう彼女に言うのである。
「それ出してきて」
「ううん、私今飴舐めてるのに」
「舐めながらでも動けるじゃない」
 この場合は母の方が正論である。まさにその通りであった。
「だからよ。いいわね」
「仕方ないなあ。それじゃあ」
 こうしてだ。裕美子は再び席を立ちそうして牛乳瓶を家の牛乳瓶入れ、いつも牛乳屋さんにそこから牛乳を貰い牛乳瓶を手渡す場所に置いておいた。それが終わってからまた家に帰ったのである。これでやっと飴をゆっくり舐められると喜んでだ。ところがなのであった。
 母はまたしても言ってきた。今回は何かというとだ。
「御風呂入りなさい」
「御風呂って」
「それか歯を磨きなさい」
 こう言うのである。どちらかにしろというのだ。
「いいわね。すぐにね」
「まだ飴舐めてるのに」
 それはまだ口の中に残っている。思ったよりも減っていない。彼女にとって母の今の言葉はだ。迷惑以外の何者でもなかった。
「それでそんなこと言うの?」
「舐めながら御風呂入られるでしょ」
「嫌よ、そんなの」
 それはだ。顔を顰めさせて断る裕美子だった。
「何か食べながら御風呂に入るなんて」
「あんたそういうのは嫌いなのね」
「正直言って好きじゃないわ」
 本音をだ。母親にありのまま話した。
「だから、それは」
「じゃあ歯磨きしなさい」
「余計に無理じゃない」
 さっきよりさらに顔を顰めさせ
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