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忘れ物
4部分:第四章
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第四章

「有り難うね」
「あの、先生」
 担当はだ。恐る恐る谷山に尋ねた。
「それでなのですが」
「それで?」
「いいのですか?」
 こう彼に問うのである。
「それで。御気分を害されたとかは」
「気分を害したって?」
「はい、そういうことは」
「何でそうなるんだい」
 電話の向こうでだ。谷山がきょとんとなっていることがわかった。
「どうしてそうなるんだい」
「違いますか?」
「全く。そんなことはないよ」
 そうだというのである。
「何一つとしてね」
「そうなんですか」
「あの、それでだけれど」
 今度は谷山の方から問うてきた。
「あの時は何で呼んでくれたのかな」
「えっ!?」
「何でなのかな、呼んでくれたのは」
 こう担当に尋ねてきたのだった。
「私を呼んでくれたのは」
「料亭にですか」
「何か用があったのかい?」
「はあ」
「何でだったのかな」
「あのですね」
 ここでだ。担当は何故彼をあの料亭に呼んだのか話した。それからだった。
 また編集長と担当が彼をあの料亭に呼んでだ。そうして話をするのだった。
 谷山はその話を聞いてだ。唖然として話すのだった。
「そうだったのか」
「はい、そうです」
「新連載を御願いしたいと思いまして」
「ああ、それでだったんだ」
 谷山はそれを聞いて納得した。自分の席に座りながらそのうえで言うのだった。
「新連載だったんだ」
「はい、それでだったのです」
「実は」
「成程ね」
 ここでだった。彼は事情がわかった。そうして言うのだった。
「じゃあ新連載は」
「はい」
「どうされますか」
 話がようやく核心に至ってだ。編集長も担当も身を乗り出した。そうしてそのうえで彼の話をしかと聞こうとするのだった。
 するとだ。彼は言うのだった。
「書かせてもらうよ」
「そうですか」
「書いてくれるんですね」
「あそこまで御馳走になったからね」
 笑顔で話す彼だった。
「是非共ね」
「はい、それでは」
「御願いします」
「いやあ、それでだったんだ」
 谷山は笑いながら話していく。
「成程ね。それならそうと早く言ってくれたらよかったのに」
「ま、まあそれは」
「何といいますか」
 編集長と担当は唸りながら述べた。
「後で申し上げようと思ったのですが」
「それが」
「そこで僕が先に立ってしまった」
 そうだったとだ。話すのだった。
「僕のうっかり話ということかい」
「いやあ、あの時は驚きましたけれどね」
「それでもね」 
 こんな話をしてだった。この日もだった。
 御馳走が次々と運ばれてくる。この日の御馳走は何かというとだった。
「口直しということで」
「いいですか?」
「というと二度目の御馳走だね
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