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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二十七話 ヴァンフリート4=2 (その2)
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滅びるかを選択する事になると思います」
「ほう、参謀長もですか」

「小官など相手にもならんでしょうし、もともと敵対する意思もありません」
……確かにミューゼルには能力も意思も覇気も有る。しかし、底が見えないのはこの男だろう。この戦いでミュッケンベルガーをコケにするような事ばかりやっているが、勝っているから文句も言えん。ただの秀才参謀にできる事じゃない。この男一体何者だ?、何を望んでいる?

「参謀長、では何故俺の下にミューゼル准将をつけたのです?」
「勝つためです。それと軍の人事では納得のいかない人事など幾らでもあります。不満を抱くなとは言いません。しかし不満を露にするようでは彼のためにならないでしょう。我慢する事も覚えていただかないと」

「参謀長は意外に辛口ですな」
「小官は甘口です」
またこの会話だ。俺たちは思わず顔を見合わせて笑い出した。

「リューネブルク准将、一つ忠告をしてもよろしいですか」
「なんですかな」
「最前線で自ら戦うのは止めていただきたい」
「……白兵戦をするなと? それはどういうことです?」

「此処は最前線です。となると敵も最精鋭を用意しているでしょう」
「……ローゼンリッターですか」
「はい。彼らとは直接戦って欲しくないのです」
「俺が負けると」

「さあ、どうでしょう。ただ必要以上に恨みを買う事は無いと思います。意地で殺し合いなどするべきではない」
「それは命令ですか」
「……命令だと言えば止めてもらえますか」
参ったな。こんな風に心配されるなど亡命して以来初めてだ、無碍に断れん。

「判りました。約束は出来ませんが、留意しましょう」
「失礼な事を申し上げました。お許しください」

全く失礼な男だ。俺など気にかけても何の得にもなるまいに。しかし、こうも心配されては死ぬ事も出来ないか…。帝国に亡命して三年、飼い殺しだ。このまま朽ち果てるなら、いっそとも思ったが……。この男に賭けてみようか? まて俺はいったい何を賭けるのだ? 未来? 命? 運命? 馬鹿な、俺は何を考えている。 

■強襲揚陸艦ヴァンファーレン

「リューネブルク閣下、地上降下地点まであと十分です。」
副官の声が俺を現実に呼び戻した。
「うむ。ミューゼル准将、卿の働きに期待させてもらうが、よろしいか」
「卿を失望させる事が無いよう努力しよう、リューネブルク准将」

なるほど他者の下に就く男ではないか。
外にはワルキューレが護衛として五十機付いている。ヴァレンシュタインは俺達の援護のために最善を尽くしてくれた。俺たちが勝つためではなく、俺たちが生き残るために。あの男に賭けてみよう、何を賭けるのかは後で考えればいい。そのうち見えてくるものも有るだろう。だから、先ずはこの戦いに生き残ろうで
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