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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百八十二話 批准
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いる。同盟市民を混乱させ分断し各個に撃破する……」
「戦争みたいですね」
ヤン提督が大きく頷いた。
「その通り、外交は形を変えた戦争だよ、ユリアン」
なるほど、未だ戦争は続いているんだ。では先ずは補給を摂らないと……。
「食事にしましょう、提督」



帝国暦 490年 5月 7日    ハイネセン  ホテル・カプリコーン ヴァレリー・リン・フィッツシモンズ



惑星ハイネセンでは連日反帝国、講和条約批准反対デモが起こっている。最高評議会ビルの前、ホテル・カプリコーンの前、ハイネセン記念スタジアム等だ。しかしいずれも参加人数はそれほど多くないし気勢も上がらない。やはり三十年後に統一するという事、つまり帝国は同盟市民の不安を解消してから統一しようとしている、同盟市民に配慮しながら統一を進めようとしているという事で困惑が有るようだ。

マスコミもそのあたりの事を指摘している。もし批准を拒否すればどうなるのか? 帝国は今すぐに同盟を滅ぼして統一するのではないだろうか? そうなれば状況は今以上に悪くなるだろう、デモ参加者はそれを分かっているのかと……。そのためデモ参加者からは直ぐに同盟を滅ぼすと言ってくれれば良いのにと泣き言まで出ているらしい。相変わらずウチの元帥閣下は性格が黒いわ、なんでこんなにドス黒いんだろう。でもそのくらいじゃないと宇宙を統一なんて出来ないのかもしれない。

その元帥閣下は自室でパジャマの上にガウンを羽織り、紅茶を飲みながら詰まらなさそうにTVを見ている。昨日熱を出して寝込んだ。今日は平熱に戻ったけれど仕事は禁止、静養する事になっているせいだと思う。私とリューネブルク大将が説得した。当然だけど元帥が発熱でダウンした事は緘口令が布かれ公にはなっていない。艦隊司令官達でさえ知らない。こんな事が外に漏れたらどんな騒ぎが起こる事か……、想像したくない。

ドアをトントンとノックする音が聞こえると“リューネブルクです”という声と共に大将が部屋の中に入って来た。
「如何ですか、御具合は」
「見ての通り、悪くありません。暇です」
詰まらなさそうな声と表情にリューネブルク大将が苦笑を漏らしながら近付いて来た。挑発しないで下さいよ、大将。補給士官が誤ってココアの在庫を少なく積んだせいで飲み切ってしまったんです。

「外の様子は如何ですか?」
「まあデモ隊は大した事は有りませんな。今のところ警備に不安は感じません。もっとも油断は禁物ですが」
リューネブルク大将の答えにヴァレンシュタイン元帥が“そうですか”と言って頷いた。

「問題はこれからでしょう。期限は三週間、少しずつ期限が迫ります。それが同盟市民にどういう影響を及ぼすか……」
「……」
諦めるか、それとも反発するか、同盟市民が三十年という期間をどう
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