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魔王の友を持つ魔王
§69 殲滅戦
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で無い分どうしてもそういうところでは一歩譲る形になるのだが、その差がこういう場面で顕著に表れてしまっている。

「あと2、3回の権能で仕留められないと撤退だな」

 回復や撤退を頭に入れなければもうちょっと近く出来るかもしれないが。それらを念頭に置けばそんなものだろう。更にこうやって時間を浪費していく間にも呪力は着々と消費されているわけで。

「今回は翠蓮に頭があがらんな」

 背後に具現化するは金剛力士。

「はぁああ!!!!」

 巨大な像が、神速で踏み込む。

「ぬぅ!!」

 巨体の割にそんな動きをするとは思っていなかったのか、悪魔の反応が一拍遅れて、

「捕まえた!!」

 暴風を纏った拳は汚物を容易く吹き飛ばし、件の悪魔を捕獲する。

「私を捕まえた程度で勝った気になど……ぐっ」

 捕まえた時点勝てるなど思ってるわけがない。どれだけ修羅場を潜り抜けてきたと思っている。そっちこそ、こっちを舐めすぎだ。

「残念ながら、こんくらいで油断はしないよ」

 黎斗の右手が、強く握りしめられる。黎斗の動きを模倣(トレース)する金剛力士も、右手を強く握りしめる。仁王の右手は、あらゆる悪鬼を粉砕せんと。その強大な力を十二分に発揮する。

「が、がぁあああああ!!!!」

 剛力という単純な権能であるが故、その最大出力は規格外。更に八雷神によって僅かでも強化している一撃。借り受けていて弱体化しているとはいえ、それでも、その掌は。

「終わりだ」

――――まつろわぬ神すら握り潰す。

 支配者を喪った糞尿が、落ちてくる。右手の中で何かが消失した感覚と共に。

「っとと」

 金剛力士が消えていくのを見つつ、落ちてくる汚物を回避する。とりあえずは被害軽微、といってよいだろう。次まつろわぬ神きたら本気で死ぬけど。もう呪力ないんでホント勘弁してください。そんなことを思っていれば。

――――べちゃっ

「ん?」

 なんか嫌な音が聞こえた。待て待て冷静に考えよう。落ちてきた汚物を自分は回避した。じゃあ、回避した汚物は何処へ行く? 消えるなんてご都合主義な事は起こりえない以上。下に落ちる。

「ちょっと待ってちょっと待って」

 顔を真っ青にして、黎斗が恐る恐るしたを覗く。

「……」

 眼前には汚物の流れる、美術館の廊下。壁にも茶色の染みが大量についていて。これは名画の数々が無事だと考えるのは流石の黎斗もちょっと出来そうにない。

「しらねーよこんなんどーしろってんのさぁ……」

 盛大にやる気を失った黎斗は、屋根の上に倒れ込む。
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