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銀河抗争史 統一への道
イゼルローンを撃て
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れはそれで良いのか)
 コリアンは攻撃開始前に訓示を行った総司令官を思い出す。
『死に急ぐ事は無い。生き残る為に足掻け』
 第4次イゼルローン要塞攻略作戦の指揮は、そう発言したラザール・ロボス大将が実施している。
(ロボス大将は、元帥昇進と宇宙艦隊司令長官の椅子を狙っていると噂されていたな)
 参謀長としてグリーンヒルが補佐しており、失点は限りなく少ない。今回の作戦で成果を上げれば元帥昇進の加速は間違いない。
(下の気持ちが分かる人に出世して貰いたいが、そう言う人事ばかりでもないか)
 士官学校を私物化し自らの軍閥を拡大しようとしていたシトレを思い出して気分はげんなりとした。
 シトレの対抗馬となれる実力と実績を兼ね揃えた人物がロボスだ。
 国防委員会の指示で行われる今回の派兵だがロボスは最後まで反対していた。将兵を政治の駒とは捉えず生き残らせようとしての行動だった。
(ロボス提督には頑張って貰いたい)

◆◇◆◇◆◇◆

 投げたボールは空気の抵抗で失速するまで飛び続ける。宇宙空間ではどうか。
 惰性の法則に従うなら力が加えられない限り飛び続ける。
「──と言う事で、有効射程外から射っても弾は飛びます」
 ロボスにアンドリュー・フォークと言う若い少尉が制圧射撃を提案してきた。
(若いのに痩せすぎだな。ちゃんと食ってるのか)
 フォークの容姿と顔色の悪さにロボスは他人事ながら心配をしてしまう。
「なるほど、わざわざ艦隊を要塞主砲の射程距離に入れる必要は無いか。参謀長はどう考える?」
「悪くは無いと思います」
 過去3回の攻撃は失敗しており今回も力押しだ。少しでも味方の損害を抑えられる策があるなら、そちらを選択する。
 作戦変更で混乱を与える事も無い。攻撃準備の制圧射撃が射程外から行われた。
 青い矢が同盟軍の艦隊から放たれ要塞の外壁を濁流となって襲った。いかに要塞がコーティングされていても綻びは生じる。その綻びを広げるのがスパルタニアンの任務だ。
 帝国軍は、混戦にもつれ込んで敵を接近させては要塞の火力を発揮できないと認識していた。そのため機動戦力の予備隊である駐留艦隊は温存する姿勢を見せた。
 同盟軍の接近を手ぐすね引いて待っていたが、蓋を開けてみれば要塞主砲の射界の外から艦砲射撃を浴びせられる事になった。
 生き残った砲台から打ち上げられる砲火を避けながらスパルタニアンはイゼルローン要塞に接近する。
(いける、いけるぞ!)
 ヒューズ少尉は興奮を覚えた。出撃前のブリーフィングで要塞主砲の有効火制宙域を説明されていたが、実際は味方の艦砲射撃で穴が空いている。
 穴に向かってヒューズは突き進んだ。
(俺が死んでも無駄にはならない)
 血の教訓が活かされるとヒューズはそう信じた。
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