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暗殺者
7部分:第七章
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第七章

「枢機卿をこのことで追い詰めるのは不可能だ。向こうも知らぬ存ぜぬで通す」
「そうですね」
「あの枢機卿なら」
「しかし。消すことはできる」
 だが彼はそのうえでこう言うのだった。平然とした、それでいて酷薄なもののある顔で。
「彼をな」
「できますか」
「それではまさか」
「そうだ、自分の手駒で死んでもらう」
 その酷薄な顔で蛇を見下ろす。そうして言うのである。
「どうだ、それで」
「それではこの蛇は」
「死んではいない」
 また蛇を見て述べる。
「眠っているだけだ。言うならば冬眠だ」
「冬眠!?」
「蛇は寒い中では冬眠する」
 そのことを従者に対して説明してみせた。
「それもあって寒くさせたのだ」
「部屋の中をですか」
「そうだ。これを枢機卿の部屋に忍び込ませろ」
 彼はそう指示を出した。
「よいな、それで」
「はい」
 従者達は今の太子の言葉に頷いた。むべもなくといった様子で。
「わかりました」
「それではすぐに」
「頼むぞ。上手くいけばこれで話は終わる」
 こうも言った。
「これでな」
 そのうえでその酷薄な笑みをさらに深いものにさせるのであった。彼の打つ手はもう行われていた。そうしてそれから数日後。枢機卿が急死したとの話が伝わったのであった。
「死んだな」
「そうですね」
 太子はそれを父王から直接聞いていた。二人は公爵も交えて王の間で三人で話をしていた。その時の話なのであった。
「身体がドス黒くなって死んでいたそうだ」
「おやおや、それは」
 太子はそれを聞いてわざとおどけてみせた。
「同じではないですか、今までの死に方と」
「そうだ、同じだ」
 王もそれはわかっている。わかっているからこそそこを強調するのであった。
「死んだ。同じようにベッドの中で」
「ふむ」
「やはり死因はわかりはしない。一応は病死ということになっている」
「病死ですか」
 それを聞いた時の太子の顔がシニカルな笑みに包まれた。それは真相を知っている者の笑みに他ならない。その笑みを今ここで見せているのである。
「それはまた」
「不思議な話だな」
 王はあえて太子のそれに乗り。こう言うのだった。
「ここまで急死が続くとは」
「流行り病でしょう」
 太子の言葉はあくまでしれっとしたものであった。少なくとも記録のうえではこうなるものだ。実際のところこうして急死した話は多い。真相は普通に記録や歴史を見ただけではわからないものなのだ。
「ただの。しかし」
「それもこれで終わりだな」
「はい。病は過ぎました」
 またクールに述べた。
「程なく」
「そして聖職者への課税は」
「何の問題もなくなりました」
 太子はそれが本題であると言わんばかりに言ってみせた。やはりこ
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