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ホテル

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「それを仕組んでいる間に後ろにいる客がそわそわしていたらどう思う?」
「それは当然おかしいと思いますよ」
 尾松にもそれはわかる。警官の間では言うまでもないことである。
「何かあるんじゃないかって」
「そういうことだ。もうこれ以上は言わないぞ」
「了解、それじゃあ」
「ああ、帰るか」
 また立ち上がった。今度は身支度を整えながらだ。
「署にな。それから」
「罠を仕掛けると」
「この街はな、迷路みたいになってるんだ」
 山根はベッドから立ち上がって身支度を整え終わるとこう述べた。
「何処に行ってもな。道が複雑に入り組んでる。人もな」
「そうですね」
 歴史自体はそれ程ではないが。だが発展し、栄えてきた歴史が街を迷宮にしてきたのである。
 様々なものが入り組みカオスとなっている。道も色彩も様々でその中には無数の人、そして人ならざるものが存在し、徘徊している。言うならば魔都であるのだ。
 その都の秩序を護ると言えば聞こえがいい。だがその真相は。
「俺達もこの迷路の中で迷っている」
 山根は署に帰り刑事課に戻ると尾松にまずこう言った。その手には煙草がある。やっと吸えたといった感じである。
「他の奴等と同じようにな」
「警官もですか」
「警官とかそういうのはこの場合問題じゃない」
 そして尾松にこう返した。刑事課の部屋の黒い皮のソファーに向かい合って座っている。二人の間には小さな足の低いテーブルがあった。そこにガラスの安っぽい灰皿もあった。
「誰だって同じなんだよ」
「誰でもですか」
「ああ、俺が言うと似合わないか?」
 灰皿に灰を落としてニヤリと笑ってきた。
「こんな台詞は」
「まあどちらかというとハードボイルドの言葉ですね」
「ハードボイルドというかホラーか?」
 山根はふと言った。おどけてみせてきていた。そうすると顔も少しだが愛嬌のあるように見える。
「小説はそっちは読まないんだがな」
「何を読んでるんですか?」
「歴史ものと戦記ものだ」
 中年らしい渋い趣味であった。
「殆どそれだな。他には漫画でビッグコミックかモーニングか」
「何か渋いですね」
「じゃあこの歳でコロコロかボンボンでも読むか?うちのチビみたいに」
 笑ってそう述べてきた。どちらもあまりにも有名な子供向け漫画雑誌である。
「いえ、流石にそれは」
「そうだろう?御前は何か秋葉原にちょこちょこ行ってるそうだな」
「知ってたんですか」
「変な趣味に走るなよ」
 笑ってそう言う。半分忠告だ。
「別に変な趣味とかはないつもりですけど」
「どうかな」
 それには懐疑的な顔を見せてきた。
「この前秋葉原行ったら全然違ってたじ
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