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龍が如く‐未来想う者たち‐
秋山 駿
第二章 交わる想い
第二話 田宮の死

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田宮と遥は喜瀬に半ば引きずられる形で、ミレニアムタワーの屋上に連れて行かれた。

大丈夫、おじさんが何とかする。
そう田宮が声をかけ続けていたが、今はその声も出ない程血に溺れていた。
拳を振り上げている犯人である喜瀬は、気怠そうに何度も同じ言葉を繰り返す。


「桐生一馬を、どこに隠した?言えば、すぐにでもラクになれるぞ」


脅し文句を何度浴びせられても、田宮はニヤリと笑い
「教える義理はない」
ただその1点張りだった。
その度に喜瀬は怒り、拳を振り下ろす事を止めない。

遥は喜瀬の手下に腕を掴まれ、離れた所で唇を噛んでいた。
何もできない自分があまりにも悔しく、噛んだ唇から血が流れ落ちている事に気付いてもいない。


「どうして元政治家のアンタが、そんな元極道の男を庇うんだ?それこそ、庇う義理はないだろ?」


口の中に溜まる血を吐き出しながらも、田宮はまだ笑っていた。
思わず、背筋が凍る感覚に襲われる。


「俺は極道は嫌いだ。だが、桐生という男は筋の通った真っ直ぐな男だった。ただ、それだけだ」
「この野郎、馬鹿にしやがってっ!!」


喜瀬は田宮に蹴りをひとつ入れると、懐から何かを取り出す。
キラリと光ったそれを、遥は見逃さなかった。


「駄目っ!!田宮さん、逃げてっ!!」


額に突きつけられたそれは、紛れもない拳銃だった。
遥はそれに気付き掴まれた腕をもう1度振り解こうとするが、何度やっても振り解けるはずがない。
田宮も最早、逃げる力は残っていなかった。
そうだと分かって喜瀬は、銃を突きつけたまま田宮の服を探り出す。
だがそこに桐生に繋がるものは何もなく、苛立ったその勢いで引き金に指をかけた。


「最後に、もう1度聞く。桐生一馬はどこだ?」
「教えるくらいなら、死んだ方がマシだ」
「あぁ、そう。じゃあ死ね」


躊躇いもなく、引き金は引かれた。
乾いた銃声が響き、銃弾は田宮の頭を貫く。
呆然としていた遥は、無意識のうちに流れた涙が頬を濡らした。
桐生の居場所は、田宮しか知らない。
その田宮が死んだ事で、桐生の居場所を知る者が誰もいなくなってしまった。

桐生のおじさんに会いたい。
ただその希望だけを胸に生きてきた少女の想いが、たった1発の銃弾で消え去ってしまった。


「組長、この娘は?」
「桐生の連れ子らしいな。今度はコイツを使って、桐生を捜す。大事に連れていけよ」


もう既に遥は、心ここに在らず。
ただ呆然と物言わなくなった田宮を見つめ、話し声は耳に届いていなかった。
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