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不条理
4部分:第四章
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第四章

「落ち着け」
「ですが警視」
「それでもこの男はです」
「許せません」
「人間として」
「だが今は取り調べ中だ」
 彼とて内心憤っていた。しかしそれでも何とか自制してだ。部下達に言ったのだ。
 そしてであった。彼は麻倉に対して問うのだった。
「それえはだ」
「ああ、何だ?」
「罪を認めるんだな」
 問うのはこのことだった。
「それはな」
「ああ、認めるさ」
 やはり平然として答える彼だった。
「全部俺がやったぜ」
「わかった。それではな」
 取調べ自体はすぐに終わった。麻倉はすぐに裁判にかけられそうしてそのうえで死刑判決を受けた。実に迅速に終わった。
 世間はこの猟奇的な事件におぞましさを感じネットでもマスコミでもスクープになった。だがその裏でだった。
 捜査と取調べを行った警官達はだ。苦い顔をしてこう話をするのだった。
「あいつ、一体何だったんだ」
「理由もなくあんなことをしたのか」
「いや、理由はあったぞ」
 警官の一人が言った。
「それはちゃんとな」
「殺したいからか」
「そんなのが理由になるのか」
「それだと何をしても許されるだろ」
「無茶苦茶な話だ」
「そうだ、そんなのはだ」
 そしてだった。この言葉が出て来たのだった。
「不条理だ」
「不条理か」
「あれは」
「そうだな」
 そしてだった。これまで話を聞いていた中村がだ。口を開いたのだった。
「あれは不条理な事件だ」
「それで人が殺されるとは」
「何か話がわかりません」
「全くです」
「そうだ、訳がわからなく滅茶苦茶な話だ」
 それは中村も言う。
「理屈に合わないな」
「けれどそれでもなんですね」
「事件が起こってああなった」
「それは事実ですね」
「事実は事実だ」
 また話す中村だった。
「世間は何でも理屈やそれで説明がつく訳ではないのだ」
「ああしたこともですか」
「あるっていうんですね」
「つまりは」
「そういうことだ。俺もそうした事件は話には聞いていた」
 こう話すのだった。
「しかしだ。実際に見たのははじめてだ」
「そうだったんですか」
「警視もああした事件はですか」
「でしたか」
「だが。これで実際に見てわかった」
 そうだったというのである。
「ああした人間がいてああした事件が起こる」
「それも世の中なんですね」
「そうなんですね」
「そうだ、訳のわからない事件もある」
 また言う中村だった。
「理由も何もかもが滅茶苦茶な事件もな」
「酷い話ですね」
「全く」
「そうして殺された人間もいるなんて」
「有り得ないですよ」
 こう話してだった。そしてそのうえでだった。彼等は納得いかないままこの事件についての全てを終えたのだった。それは
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