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大空へと
第三章

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「揚力も計算してある」
「そしてエンジンで空を飛ぶ力があるんだ」
「あのプロペラの力がある」
「それで飛ぶんだ」
「やれやれだな」
「じゃあ本当に飛ぶのかやってみるんだ」
「絶対に無理だと思うけれどな」
 周囲はあくまで言う二人に呆れていた、しかし実験を行うこと自体は止められずにいてだ。そしてだった。
 兄弟は一九〇三年十二月十七日だった。ノースカロライナ州キティホーク近郊キルデビルヒルズにおいて彼等の飛行機を持って来ていた。そしてだった。 
 ウィルバーはオーウィルにだ、こう言った。
「じゃあ御前がな」
「ああ、このライトフライヤーをな」
「空に飛ばせよ」
「悪いな、兄貴」 
 オーウィルはここでだ、ウィルバーに笑って言った。
「俺が最初で」
「仕方ないさ、どっちかってなってな」
「俺になったからだな」
「ああ、だからな」 
 それで、というのだ。
「御前が乗れ、そしてな」
「そのうえでだよな」
「空を飛んでくれよ」
「俺達が正しいってな」
「ああ、それじゃあな」
「行くな」
 オーウィルは兄に確かな笑顔で答えた。
「空に」
「飛行機でな」
 こう二人で話してだ、そのうえで。
 オーウィルは操縦席に入ってだ、操縦をはじめた。飛行機はゆっくりと前に出てだった。それから速度を上げて。
 遂にだ、宙に浮かび。
 飛んだ、空に。オーウィルは空から大地にいるウィルバーに言った。
「兄貴、見てるな」
「ああ、ここでな」
 ウィルバーは弟に満面の笑顔で応えた。
「見ているぞ」
「俺は空を飛んでいるぞ」
「飛行機でな」
「俺達が正しかったんだ」
「こうして空を飛べる」
「そうだ」
 まさにというのだ。
「飛行機でもな」
「機械でも空を飛べるんだ」
 兄弟でだ、空と陸から話した。
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