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なかったことに
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第七章

「困ってるんだよ」
「それでもこのままだと一緒ですよね」
 本郷はありのままだ。一家に対して指摘した。
「疑惑がさらに尾鰭がついてそれこそですよ」
「じゃあどうすればいいっていうんだよ」
 息子はまた彼等に言い返した。
「一体どうすれば」
「それならです」
 役が話す。
「ありのまま言えばいいのです」
「ありのままですか」
「ダメージは既にかなり受けています」 
 一家の風聞だ。それはもう仕方ないというのだ。
 だがそれでもだとだ。彼は言うのである。
「しかしこれ以上のダメージを受けないようにする為にです」
「事実をありのまま」
「公表すべきだと」
「それが一番です」 
 役はベネット、死んだ彼女の両親達に対しても淡々と話す。
「結局のところは」
「結局のところは」
「そうするしかない」
「事実を言ってはならない時は確かにあります」
 世の中というものはそういうものだ。それはどうしてもだった。
 しかしだ。それでもだった。今はというのだ。
「ですが今はです」
「事実を公にすべき」
「そうするべきだと」
「そうです。そうすればいいです」
 これが役のアドバイスだった。
「それでどうでしょうか」
「確かに。このままだと」
「余計に疑いの目がかけられる」
「それならもう」
「これ以上は」
 まず両親が話していってだ。そうしてだ。
 息子もだ。こう言うのだった。
「それしかないか、やっぱり」
「貴方達は殺人罪にも他の犯罪についても適用されないでしょう」
 警部は助け舟を出す形で一家に話した。
「事実を隠蔽したのは確かですが」
「それでもだと」
「そういうのね」
「そうです。事実貴方達は殺人行為も何もしていませんから」
 だからだというのだ。
「それはありません」
「そうですか。それなら」
「安心して」
「では。事実を」
 こうしてだ。一家は事実を公にしたのだった。事実がわかるとだ。
 暫くは拒食症の問題が話題になった。だがそれもすぐに終わりだ。一家は日常の生活に戻った。本郷と役はこのことを日本で聞いた。
 その中でだ。本郷はだ。うどん屋でうどんを食べながらだ。向かいの席で同じくうどんを食べている役に対してだ。こう言うのだった。
「何ていうかですね」
「ベネットちゃんの話か」
「はい、すぐに公にすればよかったんですよね」
 こうだ。彼は役に言うのだった。
「拒食症で死んだって」
「傍から考えればそうだな」
 その通りだと答える役だった。
「それはな」
「はい、しかしそれが言えなかった」
「人間はプライドや体面を気にするからな」
「しかも咄嗟に危ないことがあれば余計にですね」
「そうだ、そうなってしまう」
 まさにそうだというの
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