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素顔の正義
8部分:第八章
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第八章

「自業自得か」
「そうかも知れませんね」
「君がそうさせたのではないのか?」  
 秘密を掴んで彼のやり方で発表させたのではないかというのだ。
「違うのか?」
「知りません」
 北條は真実を隠して答えた。
「私は」
「そう言うのならいいがな」
「ただ。一つ申し上げたいことがあります」
 しかしだった。ここでだ。
 北條はトップにだ。こう告げたのだった。
「テロリストも元総理もです。悪でした」
「そうだな。ならず者国家と癒着し多くの人命を奪ってきたからな」
「破壊工作も意図的な原発の事故の誘発もです。全て悪です」
 そうとしか言えないことだというのだ。
「悪は裁かれるべきですから」
「ああなって当然か」
「この世には正義があります」
 北條が次に言うことはこのことだった。
「そして警察はそれを守る立場にあります」
「正論だな」
「はい、正論です」
 まさにそうだと。北條は言い切った。
「そして人の心の中には必ずそれがあります」
「正義があるとか」
「はい、言えます」
「何を根拠に言えるのだ?」
 トップは北條のその顔を見上げて問うた。座った状態で立っている相手を見上げているがそれでもだ。背の高い北條は大きく見えた。
 その彼を見上げてだ。問うたのである。
「人の中には必ず正義があると。悪を見てきて」
「私がそうだからです」
「君が?」
「私に正義の心があるからです」
 だからだというのだ。
「言えるのです」
「言うな。君が正義か」
 そのだ。嫌味で冷淡でだ。しかも人を殺すことに躊躇を見せず相手を倒す為には謀略も厭わない北條にだ。彼の得意の嫌味で返したのだ。
「言っていておかしいと思わないのか」
「思いません」
「それは主観か?」
「客観です」
 淡々としたまでの言葉だった。
「実際に私は悪を犯していません」
「そういえば君は汚職やそうしたことはしないな」
「調べて頂ければわかります」
「そして警察の法規も我が国の法律も破らない」
「もっと言えば交通ルールもです」
 それも完璧に守るというのだ。
「常に心掛けていますので」
「悪はしていないか」
「正義を守ることが私の義務ですから」
「だからそうしているのか」
「これからもそうします」
 北條は淡々とした口調のまま無表情で述べていく。
「では」
「そうか。それではこれからもな」
「正義を守っていきます」
 完璧な敬礼で応える彼だった。彼はやがて警察庁長官になった。完璧なまでに正義を貫く長官として知られた。それが彼だった。
 しかし人望はなく嫌味で冷淡な人物だという評価は変わらなかった。しかし彼は一切悪は犯さず許さなかった。それもまた真実であった。そうした意味でだ。彼は間違いなく正義
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