暁 〜小説投稿サイト〜
TOL〜幸運と祝福の物語〜
プロローグ@

[2]次話
「はぁ…はぁ…はぁ…。」
「くそ!あの女どこ行きやがった!」
「くっ…。」

あぁ、またこの夢か。
女性が必死に俺を抱えて走っている。
それを、鎧を纏った集団が追いかけてくる。
暫く距離を取ったところで身を潜めて、女性は俺に語りかけるんだ。

「ごめんね、フォルナ。もう少しで村に着くからね?」

疲れた声色で俺の名前を呼ぶ女性の顔は、慈しむような微笑みと、今すぐにでも泣きそうな顔をしていた。
身体のあちこちからは血が流れ、今にも倒れそうな状態。その身体に鞭を打つように、一歩ずつ村のある方へ歩いていく。

「あっ。」

しかし、女性は倒れてしまった。今まで無理をして走ってきたのだろう。足にどれだけ力を入れても動く気配がない。女性は諦めた表情を露にすると、ゆっくりと俺を地に置いた。

「フォルナ。貴方だけでも生き延びてね?」

女性は手を合わせ祈り始める。すると目映い白い光を一瞬放つと、そこには白色の翼を生やした球体が浮かんでいた。白い球体は俺を包み込むようにして持ち上げる。

「貴方に幸運が訪れることを祈ってる。愛してるわ、フォルナ。」

女性の言葉が終わると同時に、白い球体は村のある方向へと飛び立っていく。
そして俺が最期に見た光景は、鎧を纏った集団が女性に剣を降り下ろそうとしている瞬間だった。

[2]次話


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