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5部分:第五章

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第五章

「しかも家に斧や鋸もないしね」
「違うかな」
「ああ、それに」 
 青い目の子供が言ってきた。
「その日だけれどね。この人ね」
「この人は?」
「どうだっていうの?」
「その日はロンドンにいなかったんだ」
 そうだったというのである。
「その日丁度ウィンザーの親戚のところに行っていたんだ」
「ウィンザーっていったら」
「全然違うね」
「そうだね」
 皆それを聞いてそれぞれ話した。
「つまりアリバイがある」
「そういうことだね」
「つまりは」
「うん、この人は犯人じゃない」
 それを話すのだった。
「間違いなくね」
「それだったら一人?」
「その最後の一人になるね」
「それは誰かな」
 子供達はあらためて話す。そうしてだった。
 最後の一人に対して考えを巡らせるのだった。その一人はというとだ。
「この人はかなり怪しいよ」
「怪しい?」
「そうなんだ」
「仕事は大工でね」
 最初に仕事として疑惑が浮かんだその職業だ。
「それでね」
「それで?」
「他にあるの?」
「しかも家には鋸や斧もある」
 それもだというのだ。話しているのは黒髪の子供だ。
「どちらもね。しかもその二つを使うとかなり上手いらしいよ」
「かなりね」
「そうなんだ」
「そう、それなんだ」
 黒髪の子供はまた話した。
「もう他の大工さん達よりもずっと凄いんだ」
「そんなになんだ」
「そんなに凄いんだ」
「うん、ロンドンで一番なんだって」
 その腕についても話される。
「そこまで凄いんだって」
「成程ねえ」
「そういえばだけれど」
 今度言ったのは赤髪の子供だ。
「その鋸や斧の切り口とか凄く鮮やかで手馴れたものらしいよ」
「そうなんだ」
「そこまでなんだ」
「そう、とにかく凄いんだ」
 こう話されていく。
「あっという間にね。夜の街で切り刻んだんだから」
「すぐに切り刻んだ」
「それだったら」
「その人?」
「それにだけれど」
 今言ったのはだ。緑の目の子供だった。
「その大工さんね、実は被害者の人に凄い恨みがあったんだって」
「そんなに?」
「そんな恨みがあったんだ」
「お金をかなり貢いだけれどそれでも振られたんだって」
 よくある話だ。娼婦とはそういうものだ。娼婦はそうして金を手に入れるものだ。それがいいか悪いかは別にして娼婦とはそういうものとして割り切って遊ばない方が悪いという話だ。

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