暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン -旋律の奏者-
アインクラッド編
平穏な日々
紅色の策略 02
[4/4]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
べく甘い空気を出さないよう、サチ姉は笑って、それからアスナさんを正面から見据える。
 咎める色でも、責める色でも、まして嫉妬の色でもない、ただただ申し訳なさそうな色が揺らぐ瞳をアスナさんに向け、すぐに俯いた。

 「あー、サチ姉。 みんなが待ってるんじゃないのかな?」
 「え? あ、うん、そうだね。 じゃあ、もういくね……」
 「うん。 また近いうちに遊びにいくから」
 「待ってる。 じゃあ、キリト」
 「ふぉあ?」

 頑張って。
 小さな声で短く言い残したサチ姉は、アスナさんとアマリに一礼してから控え室から出ていった。

 「……フォラスさん」
 「その話しは後でね」
 「はい……」

 微妙な空気が流れる中、いよいよデュエルが始まるようで、キリトとヒースクリフを呼び出すアナウンスが辺りに響く。
 観客たちの怒号のような歓声がコロシアムを揺らし、周囲の空気が塗り変わる。

 「さて、出番だな」

 最後のサンドイッチを飲み込んだキリトが、手を払いながら立ち上がる。
 表情に余裕はない。 けれど、ワクワクしているのが手に取るようにわかるほど、その双眸は爛々と輝いている。

 「戦勝報告を期待してるですよー」
 「無茶はしないでね」

 背に吊った漆黒の愛剣、エリュシデータの柄に軽く触れ、大きく息を吐くと、キリトはそれぞれの声援に押されて一歩踏み出す。
 僕がその背にかける言葉はただひとつ。

 「いってらっしゃい」

 キリトの返事もたったの一言だった。

 「いってくる」

 そうして《黒の剣士》は控え室から出ていった。
[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ